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サントリーミュージアム[天保山]

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展覧会ミニ講座

「レゾナンス 共鳴 人と響き合うアート」展を楽しむためのミニ講座
第2回
大阪湾を背景に建つサントリーミュージアムの一角に、海を見渡す展示室「展望ギャラリー」がある。ここは西側の全面がガラス張りとなっていて、晴れた日の夕刻には、遠く瀬戸内海に浮かぶ淡路島の背後へと沈む夕陽を眺めることができる。この展望ギャラリーに40本のスピーカーが整然とならび、そこから荘厳なバロックの宗教曲を歌う歌声が鳴り響く。カナダ出身のアーティスト、ジャネット・カーディフによる《40声のモテット》という作品で、イギリスのソールズベリー大聖堂の聖歌隊40人が歌う同名の合唱曲を、高精度のデジタル技術を駆使して録音し、その歌声を1人1本のスピーカーを割り当てて再生しているものである。私たちは、通常、聖歌隊の中に入ってその歌声を聴くという経験をすることがないが、この作品では、その高精度の音響技術によって、40人の聖歌隊の存在が空間に再現され、私たちはその内部に入り、歌声を全身に浴びて鑑賞することとなる。
 この作品で使われている合唱曲《40声のモテット》は、16世紀のイギリスを代表する作曲家、トマス・タリスによるもので、ジャネット・カーディフは、その曲自体が内包する「彫刻的」な構造に着目し、この作品の着想を得ている。曲の進行によって、楕円形に並べられたスピーカーの各所から声が発せられ、それらが空間を行き来しながら、追走し、絡み合い、非常に複雑な音の場を浮かびあがらせる。洪水のように押し寄せる音の波は、私たちの体を包み込み、ちょうど荘厳な大聖堂の内部と同じように、私たちの意識を窓の外に広がる空間へと解き放ち、さらには空高く浮揚させていく。
 海に沈む美しい夕陽を背景に鑑賞するこの作品は、まさに格別である。ぜひ会期中に、晴れた日の夕刻を選んで本展を訪れ、他では絶対に味わえないこの「崇高」なる体験を、味わってみてはいかがだろうか。
40声のモテット
The Forty Part Motet
トマス・タリス作曲 Spem in Alium Nunquam habui, 1573による
2001 
14分(音楽11分・休憩3分)

Sung by Salisbury Cathedral Choir
Recording and Postproduction by SoundMoves
Edited by George Bures Miller
Produced by Field Art Projects
Forty Part Motet by Janet Cardiff was originally produced by Field Art Projects with the Arts Council of England, Canada House, the Salisbury Festival and Salisbury Cathedral Choir, BALTIC Gateshead, The New Art Gallery Walsall, and the NOW Festival Nottingham. Photo Markus Tretter
第1回

ラキブ・ショウ
《神の不在III…そして彼の血の涙によって民の町々は洪水となろう》
Absence of God III...And His Tears of Blood Will Drown the Cities of Men
2008 Courtesy of White Cube Photo by Todd-White Art Photography
色とりどりの草花がからまった円柱が何本も並び、その間を鳥の姿をした生き物たちが楽しげに飛び交っている。しかし目を近づけてみれば、それらは鳥ではなく、鳥の姿を借りたおぞましき悪霊のような生き物たちなのだ。彼らは飛翔しながら、剣でお互いの胸を突き刺し合い、息絶えたものたちを縄でくくって引きずりまわす。一方、上方にある円形のパネルに目を向ければ、そこでは鳥の羽を持つ「神」が、目から血の涙をあふれさせており、その流れが刃のようなものとなって人々の眼球を貫き、その苦痛にもがき苦しむ人々の地獄絵図が繰り広げられている。それらは、見る者の想像力を烈しく掻き立てると同時に、その視線を細部に招きいれながら、おぞましき事物を志向する私たちの潜在的な好奇心と共鳴しあう。
 インド出身の画家ラキブ・ショウは、ヒンズー、イスラム、仏教、キリスト教といった様々な宗教に触れた経験を通して、それらをカルト的な熾烈さを帯びた独自の宗教的主題として結実させ、緻密な装飾的画風で描いていく。それはまさにエロスとタナトスの荘厳なる饗宴と呼ぶにふさわしい。
 独特のつやを帯びた鮮やかな色彩は工業用ペイントによるもので、七宝焼のようなゴールドのペイントの縁取は、力強い装飾性と細密画の繊細さと の融合を可能とする。奇妙な形状のパネルは、彼が敬愛するハンス・ホルバインが手がけたバーゼル大聖堂のオルガンの蓋の絵に由来する。
 現在、世界の現代アート界が最も注目する若手画家のひとりであり、日本での本格的な紹介は、本展が初となる。
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