宮崎県で家畜感染症の口蹄疫が拡大している。殺処分される牛や豚は計約6万匹に上り、国内で過去最悪の事態だ。感染拡大防止のため、県内7カ所の家畜市場はすべて閉鎖。県外で肥育され、各地の地元ブランド牛として商品化される子牛が出荷できないなど、影響は感染疑いの家畜が見つかった農家にとどまらない。
4月20日の1例目から5月8日までに、感染疑いが見つかった農家や施設は川南町を中心に計49カ所。国内で初めて豚の感染疑いも見つかり、処分対象は約6万2千匹で、うち5万匹以上を豚が占める。農林水産省によると、過去に口蹄疫が発生した際に処分された牛の数は1908年に東京などで計約500頭、2000年に宮崎県で35頭、北海道で705頭。
家畜を埋めて処分する作業が追いつかず、東国原英夫知事は1日、陸上自衛隊に災害派遣を要請、「非常事態を宣言してもいい」と事態の深刻さを訴える。隣接する熊本、鹿児島両県の一部も家畜の移動が制限された。
川南町で酪農を営む弥永睦雄さん(48)は「発症した農家は本当につらいだろう。早く終息してほしい。明日はわが身だ」と不安そうに話す。
宮崎県は、肉用牛の飼育数は北海道、鹿児島に次いで3位、豚は鹿児島に次いで2位だ。市場で取引される家畜のうち、子牛は出荷先で肥育され、各地の地元のブランド牛として店頭に並ぶ。約4割は県外で、08年度は長野や三重、佐賀各県などに約3万頭が出荷された。
宮崎県新富町の児湯地域家畜市場を主催する畜産農協連合会の奥野福見参事(58)は「5月の再開はまず無理。その間、農家は餌代がかかり、再開されても安く買いたたかれる」と心配する。一方で「買い取り業者が他県の市場に流れたとしても、子牛が育って肉の出来栄えが分かるまで2年かかる。宮崎の子牛の評価は高く『口蹄疫が終息するのを待っている』という農家からの電話も多い」と“宮崎ブランド”の信頼性に望みをつないでいる
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