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名城も陥落…長谷川に続きまた悪夢

 ガッツポーズを決めるカサレス(中央奥)を尻目に悔しさをにじませる名城=大阪府立体育会館(撮影・斎藤雅志)
 ガッツポーズを決めるカサレス(中央奥)を尻目に悔しさをにじませる名城=大阪府立体育会館(撮影・斎藤雅志)

 「WBA世界Sフライ級タイトルマッチ」(8日、大阪府立体育会館)

 チャンピオンの名城信男(28)=六島=は同級1位で挑戦者のウーゴ・カサレス(32)=メキシコ=に0‐3で判定負けし、3度目の防衛に失敗した。名城は手数で上回ったが、相手の重いパンチにぐらつく場面が目立った。カサレスとは、三者三様の引き分けで辛くも防衛した昨年9月以来の再戦だった。試合後、名城はカサレスとの再戦を熱望し、2度目の王座奪還を誓った。

  ◇  ◇

 戦う勇気を見せたかった。最終ラウンド。ダメージで動かぬ体を、名城は気力だけで前へ押し出した。前へ、前へ…。カサレスの強打を何度食らっても、一歩も下がらない。最後まで必死の形相で、パンチを振るい続けた。

 大差の判定負けに「自分の中で勝ちはないと思っていた」と完敗を認めた。カサレスの“うまさ”にやられた。足を使って距離を取られ、詰めたところに合わされた。10回にはカウンターの左フックをもらい、腰が沈んだ。それでも気力が衰えることはなかった。1つの「約束」が、名城の闘志を奮い立たせていた。

 絶対に勝ってくるから‐。

 V3戦を発表した直後の3月初めに、名城は入院中の男児を見舞った。昨年11月、世界王者になる前から支援してくれている恩人の息子(5)が、新型インフルエンザに感染した。直後に意識不明の重体となり、現在も意識は戻っていない。

 枕元から優しく語りかけ、試合後にベルトを持って訪れることを誓った。「少しでも力になれれば」。病魔と闘う男児に、自分のファイトが助けになることを祈った。男児は名城の大ファンで、試合観戦を何よりの楽しみにしていた。両親は今回も会場に男児を連れて行くつもりだったが、体調を崩すことを懸念し、直前になって断念した。

 一度危険な状態に陥った際に、病室に名城の入場曲を流すことで状態を持ち直したという。会場での観戦はならなかったが、名城の激闘はきっと男児の心に届いたはずだ。拳に込めた思いが、奇跡を起こすと信じている。

 「カサレスがやってくれるなら、ぜひやりたい」と再戦を熱望し、「メキシコでもどこでも行きます。海外で戦う夢をかなえたい」と力を込めた。2度目の王座奪還を果たすまで、名城は戦い続ける。取り返したベルトを、男児とともに巻くために。

(2010年5月9日)
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