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ドットコムの新進気鋭が集結、TechCrunch50現地詳細レポート(後編)
セッション7:ニュース、メディア
- Thoora
- 新聞やテレビが伝えたニュースに対して、ソーシャルメディアがどんな反応を示したかを計測。1000万件のブログから集めた反応をもとに、重要なニュースだけを伝えるサービス。
- Insttant
- Twitterで公開されている「つぶやき」をもとにして、今、世界で何が起きているかを整理し、ヘッドラインとビジュアルでニュースを提供する。共にティーネイジャーである、ランジェヴィン兄妹が設立。
- Perpetually
- 新しく生まれる情報があれば、消えていく情報もある。Webブラウザでブックマークされたページの5~8%が、1年の間に消えている。Webサイトの運営会社から費用を徴収し、過去のWebサイトのコンテンツを自動的に蓄積、ユーザーは時間軸で整理された状態で、必要なコンテンツを永遠にいつでも閲覧することができる。
- AnyClip
- ブログなどで、映画のワンシーンのセリフを引用したいことは、誰しも少なからず経験があるだろう。公開APIを使って、合法的に映画の1コマをブログに貼り付けることができる。
- CrowdFusion
- TechCrunch50の共同主催者ジェイソン・カラカニス氏が、以前、共にWeblogs社を設立したパートナー、ブライアン・アルヴェイ氏が率いるCMS開発会社。ブログ、ウィキ(Wiki)、フィードバーナー(RSS)、分野別検索、ワークフローなど、Webサイト制作に必要なツールが集約されていて、制作スタッフの業務効率化が図れる。
- Hark
- あらかじめ、Webブラウザにプラグインをダウンロードしておくことで、同じページを見ているユーザ同士が同じ体験を共有する(いわゆる、「バズる」行為)ことができる。
新聞でもテレビでも、ニュースの見出しを決めるのは、デスクと呼ばれる人たちであることが多い。ソーシャルメディアが、ニュースの重要性を決定づける根拠は「集合知」であり、必ずしもマスメディアには影響されない形でニュースが形成されてゆく。ソーシャルメディアは内容が玉石混交で、重要性や信憑性が整理されていないことが、マスメディアに劣るデメリットだったが、インターネットに四六時中接している人でなくても、ソーシャルメディアで世の中の動きを把握できる時代がやってきた。
動画サービス「YouTube」が著作権を違反して楽曲使用されたビデオを、強制的に削除する以外に、楽曲版権者にマネタイズ(アップルのiTunesストアへの誘導リンクを貼って、該当する楽曲の販売を試みるなど)の選択肢を与えたことは記憶に新しい。コンテンツの再利用には保守的な立場を取っていた、映画スタジオや音楽レーベル、テレビ局やプロダクションなどは、ソーシャルメディアに引用されることで利益が生み出されるしくみに、もっと寛容になっていくだろう。
セッション8:ソーシャルメディア
- Threadsy
- プラグイン等のダウンロードの必要無し。自分宛のメールやソーシャルストリーム(Twitterなど)を一本化し、さらに、メッセージをやりとりする人との関係を説明してくれる。
- Lissn
- 世界やユーザーのコミュニティで展開されている会話の聴衆の人数を頼りに、人気のある話題を計測して、気の合うユーザー同士を集め、共通の話題で盛り上げるサービス。
- Radiusly
- Twitter対抗、マーケティング専用ビジネス向けマイクロブログサービス。140文字までの投稿に加え、商品をマーケティングできるよう、企業とユーザが情報交換できる場を設けている。
- Stribe
- Webサイトに、ソーシャル・ネットワーク機能をSaaSで組み込める。数分間でオンラインゲームやeコマースサイトをセットアップでき、JavaScriptを張り込むだけで、自サイトの訪問ユーザにサービスを提供することができる。
- Clixtr
- GPSで位置情報を自動取得し、撮影した写真のストリームを自動生成する。わざわざ、タグ付けをする必要が無いので、同じ時間に同じ場所に居たら、同じ体験を共有している者同士が、自動的に写真を共有することができる。
- The Whuffie Bank
- 人の評判をもとに、リアル/バーチャルなモノに交換できる通貨を作るNPO。Twitterなどのソーシャルストリーム上での発言や、友人からのコメントをもとに評価を測定し、通貨単位「Whuffie」の擬似通貨を受け取ることができる。
ソーシャルメディアは Twitterに席巻された感のある昨今だが、距離や場所の概念をを超越して、共通の関心分野でコミュニケーションができるようになり、次はそれを整理してくれるサービスが求められているところだ。最長140文字の投稿しかできないのが、Twitter の長所でもあり短所でもあり、用途別に Twitter の派生サービスを使ってみるものの、結局、いろんなユーザーインタフェースを使うのは煩雑で、よほど便利なサービスを除いて、Twitterに回帰してみたりする。
SaaSやPaaSの例にならって、TaaP(Twitter as a Platform)という言葉さえ生まれているが、Twitterを電話やFAXと同じ次元で、企業システムのI/Oとして日常的に採用されるようになる日も、そう遠くはないだろう。
マイクロソフトとグーグルが、しのぎを削る
例年、TechCrunch50にはマイクロソフトとグーグルがスポンサーとして名を連ねており、両社共、イベント中にプレゼンテーション枠を確保している。一般的に、スポンサープレゼンテーションは聴衆の眠気を誘う、退屈な時間であることが多いのだが、今年の両社の発表は、聴衆の歓声と拍手が会場内に響く内容だった。
マイクロソフトのヤサフ・メーディ上級副社長は、同社のサーチエンジン「Bing」にビジュアル・サーチ機能が追加されることを明らかにした。画像をキーにして検索する技術は、各社が工夫を凝らしているが、マイクロソフトのそれは、キーワードを元に写真の集合からなるギャラリーを表示し、その中の写真をユーザに選ばせて、目的の結果を検索させるというアプローチだ。マイクロソフトが誇る Silverlight 技術を採用しており、画面の遷移は実に滑らかだ。プレゼンテーションに聞き入っていた、シリコンバレーのエンジェル投資家ロン・コンウェイ氏は、「グーグルとマイクロソフトが競争すれば、消費者が恩恵を得られるというわけだね」と、マイクロソフトの新しい試みに賛美を送っていた。(執筆段階で、Bing Visual Search は米国版のみで提供されており、日本から閲覧する場合、Bing のプロファイル設定を United Statesに切り替える必要がある)
一方、グーグルは、審査員にも名を連ね、才色兼備ゆえ日本にもファンが多いマリッサ・メイヤー副社長が、「FastFlip」なる新サービスのプレゼンテーションを切り出した。ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ニューズウィークなどといった有名誌が、紙のページをめくる感覚で、Web上でパラパラとめくることができる。マイクロソフトが Silverlight なら、グーグルはAjaxを駆使して、この軽やかなインタフェースを実現した、というところか。
正式版ではない Google Lab の試験サービスという位置づけであるが、既に iPhoneからも最適化された画面で閲覧できるようになっており、アマゾンの電子書籍リーダー「キンドル」にグーグルがぶつけてきた対抗策と見る公算が高い。日本の新聞や雑誌も、FastFlipで閲覧できるようになる日が待ち遠しい。
日本からは、Spysee と Lifemee が登場
残念ながら、今年のTechCrunch50には、プレゼンテーションに登壇できた日本のスタートアップ企業は無かった。来年に向けて、各社の奮闘が期待されるところだ。会場のデモピット・エリアには、日本から Spysee と Lifemeeがブースを構えていた。
Spyseeは、産業技術研究所OBの石田啓介氏が開発したサービスで、人名を投入すると、その人とつながりのある人々との相関関係を視覚的に表示することができる。ブログやウィキペディアなどに掲載された情報をもとに、セマンティックWeb技術を用いて情報が整理され、人のみならず、企業や商品などの分野にも応用が期待される。
Lifemeeは、人の一生に関わるあらゆる課題が扱えるWebサービスだ。毎日の日記の記述、友人との情報共有はもとより、資産形成のためのプランニング、死亡したときの臓器提供の意思表示もできるようになっている。「ゆりかごから墓場まで」というのが同社のキャッチコピーだ。東京の真ん中・西麻布に本拠を構えているにもかかわらず、筆者はTechCrunch50に来るまで、このサービスの存在を知らなかった。彼らは戦略的に世界をターゲットに置いていて、日本での展開はその一環と捉えている。9月のサービス・ローンチでは英語版が提供され、ようやく10月に入って、日本語版のサービスが開始された。産まれた赤ん坊に銀行口座を開くように、Lifemeeのアカウントを作って、その子の将来の幸福を祈るという両親の姿は、興味深い未来像だ。
最優秀賞は、地域情報サービスの「red beacon」に
TechCrunch最優秀賞は、地域情報サービスの「red beacon」に決まった。red beaconは、ユーザ-が求める時間、価格、提供内容などの条件で、地域のサービスや店舗を絞り込み、注文ができるWebサービスだ。プレゼンテーションでは、カップケーキを注文する例がデモされ、実際にカップケーキが会場に届き、甘いものを欲していた審査員や聴衆は一同に喜んだ。審査員の食欲が満たされて、票が入ったということは決してないと思うが、サービスの流れをリアルに再現するデモというのは、会場の共感を得るテクニックとして覚えておきたい。red beaconの最優秀賞受賞が物語るのは、新しいサービスは生活の身近なところにヒントがあるという事実と、マネタイズの確実性(収益化する見込が考えやすい)を追求及しようということだろう。
昨年のTechCrunch50の開催直後、リーマンブラザーズの経営破たんの余波がIT業界にも押し寄せ、多くのテック・スタートアップが音を立てて倒れていった。今年のTechCrunch50も当初、開催さえ危ぶまれていたが、世界中から集まった新進気鋭を目の前にして、期待に胸をふくらませずにはいられない。
TechCrunchを翻訳して掲載している、TechCrunchの日本語版編集部では、今年から秀逸なベンチャーを紹介して、アメリカの本家TechCrunchへ推薦する「東京キャンプ」というイベントを開催しており、零細スタートアップ、企業内ベンチャーを問わず、面白いサービスが生まれたら、ぜひエントリーしてほしい。
前編を読む 中編を読む- 池田 将
- コンサルタント/テックブロガー
- http://digitalway.iza.ne.jp/
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