現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 国際
  4. ヨーロッパ
  5. 記事

オランダ大麻ショップ「日本の若者、いいお客」(2/2ページ)

2010年5月5日13時59分

印刷印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:有名シードバンクのショーウインドー。大麻の種がきれいにディスプレーされている=アムステルダム、後藤写す有名シードバンクのショーウインドー。大麻の種がきれいにディスプレーされている=アムステルダム、後藤写す

写真
写真:コーヒーショップ「バーニーズ」。店員は陽気で、いくつかの日本語も知っている=アムステルダム、後藤写すコーヒーショップ「バーニーズ」。店員は陽気で、いくつかの日本語も知っている=アムステルダム、後藤写す

グラフ:  拡大  

 バーニーズから約1キロ離れた別の店ものぞいた。店員は「イチバン、ホノボノ、サイコー」と日本語で叫び、笑顔を見せた。3月に専門学校を卒業した東京都渋谷区の男性(27)は友人と2人で来た。「吸うと楽しい気分になり、音楽もよく聞こえる。日本で仕事のストレスがたまったらまた吸うかも」

 オランダ外務省によると、同国でも大麻の所持、販売、栽培は本来は違法だが、コーヒーショップは自治体の許可があれば最大500グラムの在庫が許され、客1人に約5グラムまでの販売は黙認される。そもそも吸引は違法ではない。こうした「寛容政策」が始まったのは1976年。大麻をある程度黙認することで、危険性、中毒性の高いヘロインや覚せい剤などの「ハードドラッグ」に手を出させないようにするのが狙いだ。

 大麻が吸えるコーヒーショップは全国に約700店。アムステルダム市のヒル・バンブルッセル社会福祉部長は「ショップは市のアトラクションになっている」と話す。

     ◇

 警察庁によると、昨年、大麻取締法違反の検挙者は過去最多の2920人。このうち栽培容疑の検挙は243人と10年前の約6倍。一方、乾燥大麻や大麻樹脂の密輸容疑の検挙者は48人で、ピーク時(2003年)の5分の1だった。近畿厚生局は、所持が違法な大麻草の密輸を避け、種子を入手して栽培するケースが増えているとみる。

 インターネットでオランダ産の種子を売る近畿地方の男性は「法律ギリギリのところで仕入れている」と打ち明ける。最近は種子の販売が栽培幇助(ほうじょ)罪に問われることもあり、「(サイトを)閉めた業者も多い。時間の問題。もう少しもうけたい」と話した。

 大麻寛容政策に対する外国からの批判への配慮から、オランダは国境近くでのコーヒーショップ開店を制限するなどの規制に乗り出している。

 ヒルシバリン法務相兼内務相は朝日新聞の取材に対し、「コーヒーショップの入店をオランダ在住者に制限する規制の検討を始めた」と明かした。店を会員制にしたり、銀行カードでしか買えないようにしたりして、オランダ在住者しか買えない仕組みづくりを考えているという。

     ◇

 厚生労働省監視指導・麻薬対策課は「大麻は記憶への悪影響、学習能力の悪化、人格喪失などを引き起こすほか、使用をやめても依存性が残る」と指摘する。オランダ・ユトレヒト市のNGO「トリンボス」のプロジェクトリーダー、マルフリット・バンラールさんも「若年層が常用すれば、脳の発達障害を引き起こすことがある」と警鐘を鳴らす。

 岐阜薬科大学長の勝野真吾教授(社会薬学)は「昔はまずシンナーに手を出し、次第に覚せい剤などをやるケースが多かった。今は大麻がシンナーに取って代わった」という。様々な違法薬物を経験したという男性は「最初は大麻を吸い、そのうちもっとパンチのあるやつを欲しくなった。当たり前の話」と語る。

 財団法人「インターネット・ホットラインセンター」は、大麻種子の販売広告を監視対象に加え、大麻草の画像や味などの情報を掲載した場合、栽培幇助罪にあたるとして警察に通報している。ただ、ある麻薬取締官は「大麻種子の売買が合法のままでは、取り締まるのは難しい。売買を免許制にして罰則を設けるべきだ」と訴えている。(後藤泰良)

前ページ

  1. 1
  2. 2

次ページ

PR情報
検索フォーム

おすすめリンク

貧しいはずの北朝鮮が核開発できるワケ。グルジア戦争で見えたロシアの新戦略―。4章に分けてテレビや新聞が報じない紛争の「真相」に迫る!

ロシアでベストセラーとなった『プーチンと学ぶ柔道』から、日本に繋がりの深い箇所を抜粋。プーチン独占インタビューや山下泰裕氏の寄稿も

誕生から今日までのCIAの姿を全て情報源を明らかにして描いた衝撃の書


朝日新聞購読のご案内
  • 中国特集