景気低迷を背景に、奈良市の生活保護費が急増している。09年度は初めて100億円の大台を突破して106億7000万円(3月補正予算ベース)に達する見通しで、財政圧迫の要因になっている。市はケースワーカー(CW)を増員して受給世帯の自立支援体制の充実を目指すが、行政改革で職員の削減を進めており、ジレンマに頭を抱えている。【大久保昂】
奈良市の生活保護受給世帯数は08年のリーマン・ショック以降に急増し、4月1日現在で4571世帯。09年度は前年度比415世帯(約10%)増と過去最大の伸びを記録した。
このため、当初予算に計上した保護費98億5000万円では足りなくなり、補正予算で二回、積み増しをせざるを得なかった。今年度当初予算には107億6000万円を計上したが、さらに補正予算計上を強いられる可能性があるという。
生活保護費は、国が4分の3、市町村が4分の1を負担する。派遣切りや雇い止めなどで職を失った人たちの申請が各地で急増。全国の受給世帯数も110万世帯を超え、増え続けている。
一方で奈良市では、受給世帯の生活指導や職業訓練など、自立支援に携わるCWの不足が深刻化している。社会福祉法が定める「80世帯に1人」の基準を満たすには、58人が必要だが、現状は43人しかいない。
同市は再任用職員の活用などで増員を図っている。しかし、市保健福祉部は「保護世帯数が想定外の伸びを示しているので追いつかない。十分な生活指導が難しくなってきている」と危機感を募らせている。
毎日新聞 2010年5月7日 地方版