有名シードバンクのショーウインドー。大麻の種がきれいにディスプレーされている=アムステルダム、後藤写す
コーヒーショップ「バーニーズ」。店員は陽気で、いくつかの日本語も知っている=アムステルダム、後藤写す
「ベンキョーシマッセ」。鉄製のドアを開けると、男性店員が片言の日本語で話しかけてきた。メニューには約30品種の大麻種子が並ぶ。価格はどれも10粒45ユーロ(約6千円)。
オランダ・アムステルダム中央駅近くにある大麻種子を販売するシードバンク。
店員によると、日本人客は20代の男性が多く、1人50粒程度買っていくという。日本語のカタログには、育て方や効能が写真入りで書かれている。「音と光に敏感になる」「甘草のような味わい」「害虫に強く初心者向き」……。よく読むと「商品はすべて観賞用」との注意書きも。
店員は「日本の規制は厳しいから店からは発送しない。購入して持ち帰るのは大歓迎。郵送ならCDのケースに入れると成功率が高い。パーカのフードのひもが通っている部分に入れるのもいい」。日本の取り締まり当局も、こうした密輸の手口に目を光らせる。
運河沿いの別の問屋では、店内のショーケースにカプセル入りの約50種の種子が並んでいた。
大麻種子には葉や花にある陶酔成分がない。日本では七味唐辛子や和菓子などの食材にも使われており、所持や売買は違法ではない。しかし発芽すると栽培と見なされ、大麻取締法違反となる。輸入には加熱処理が必要で、非加熱で輸入すれば関税法違反だ。ただ、税関で見つかっても、所有権を放棄すれば罪に問われないことが多い。
芸能人、会社員、主婦、中高生……。大麻取締法違反の検挙者はこの10年で急増している。中でも大麻を栽培して検挙される人が急増している。インターネットには大麻種子を販売するサイトがあふれ、その気になれば誰でも手に入れることができる。取り締まり当局がその最大の「供給源」とにらむのが、大麻に寛容な政策をとるオランダだ。
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アムステルダムの繁華街にあるコーヒーショップ「バーニーズ」。男性店員は「ハロー」と握手を求めてきた。オランダ語で「さあ、どれにする?」。メニューには乾燥大麻などが約30種類。1グラムが約10〜50ユーロ(約1300〜6500円)。取材なのでと断ったが、注文すれば、緑色の大麻を透明な袋に入れたり、紙巻きたばこのような形にしたりして渡すと話した。
オランダ人男性(36)は「仕事帰りに同僚とよく来る。大麻を吸うとリラックスできる」と話した。マネジャーのボブさん(27)は「日本の若者は高価な大麻を吸うのでいい客だ」。