富山市のコミュニティーサイクルの自転車は特注品。後輪はチューブレスでパンクしにくく、ライトは自動点灯する=6日、富山駅前、小山写す
自転車を街中のあちこちで好きな時に借りて返却できる「コミュニティーサイクル」が、富山市と北九州市で3月から相次いで始まった。期間限定の実証実験は各地で試みられていたが、事業化は初めて。バスなどと並ぶ新たな公共交通として、脱マイカーを促す可能性も秘めている。
歩道に置かれた24時間稼働の無人ステーションに、自転車が並ぶ。1台ずつ固定されているスタンドに会員カードをかざすと、前輪の電磁ロックが外れ、すぐに街に乗り出せる。
こんな拠点が富山市役所から半径1キロメートル内に15カ所。約300メートル間隔で設置されている。路面電車やバスと組み合わせて使えるよう、その駅や停留所の付近が多い。
自転車計150台が用意され、3月20日から利用が始まった。料金はクレジットカード決済。月々500円の基本料金を払えば1回30分以内なら何度乗っても無料だ。
観光地によくある貸自転車との違いは、拠点から拠点へ自由に走れて元の貸出場所に戻る必要がないという使い勝手の良さだ。
市内に住むパート職員古畑久仁子さん(57)は「1日、2〜4回は乗るかな」。朝は自宅近くから職場前まで1キロ、勤め帰りはスーパーや図書館に寄って2キロほどを走る。目的地でいったん返却してしまうので、料金や止める場所に気を使わずにすむという。「雨が降ったときは、路面電車に乗り換えて帰宅してしまう。自分の自転車よりも融通が利きます」
富山市から運営を委託されているのはシクロシティ(本社・東京都千代田区)。フランスの親会社は欧州64都市で同様の事業を展開しており、パリでは1450カ所の拠点間を約2万台の自転車が走る。