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ナトリウム冷却炉しか選択肢がないのだろうか？
「もんじゅ」の後継、巨大ナトリウム冷却炉 (朝日新聞) - goo ニュースについて。
今日は久しぶりに科学の話です。ちょっと数字が出て来ますけど，身構えないでね。
もんじゅはこの記事にあるように，ウラン235 が核分裂して(燃えて)できた廃棄物の中に含まれている，プルトニウム 238 をさらに燃料にして核分裂させてしまえ，という核反応炉です。プルトニウム 238 というのは半減期(分裂して元のプルトニウムの量が半分になる時間)が約88年というやっかいな放射性同位体です。だから，保管しているうちに勝手に核分裂して高熱を発して爆発したり，誰かがそれを使って小型核爆弾を作るかも知れません。
＃ と，言っても，ウランとかプルトニウムというのはものすごく密度が高くて，鉄の 4.25倍もの重さがありますから，テロリストが簡単に持ち出せるものではありません。それこそプロレスラーの引っ越し屋さん，レベルの力持ちでも持ち上げるのに苦労します。
んで，普通の軽水炉の場合，一次冷却系つまり直接ウラン燃料を冷却するには水を使います。ところが水は酸素と水素でできてますから，ウランと接触することで酸素原子や水素原子が放射性同位体に変わってしまい，もし水蒸気として漏れてしまった場合，放射性同位体になった水分子が環境に漏れてしまうことになります。
＃ 原子力発電所は基本的に蒸気機関でして，そうして取り出した一次冷却系の膨大な熱を，二次冷却系へ移すことによって，二次冷却系の水蒸気が発電機についた風車(タービン)を回して発電するという仕組みになっているんです。この時，もちろん，原発の周りには二次冷却系からの熱が漏れることは避けられません。
ところが，もんじゅというのは，この一次冷却系にナトリウムという金属を用います。中学や高校の時，灯油に浸かった細長い金属をカッターナイフで切って，試験管の水に入れると火を噴いたり，爆発したりという経験があったと思います。あのナトリウムなんです。
高校の化学の元素周期表を思い出して下さい。ナトリウムというのは「アルカリ金属」と言い，水と激しく反応して皮膚を溶かす怖いアルカリ(カビキラーなんかのぬるぬるの液。絶対に目に入れないように！)を生成する金属のなかまです。面白いことに，アルカリ金属の仲間は融点や沸点がとても似ています。ナトリウムの融点は 97.81℃・沸点は 883℃，カリウムの融点は 63.65℃・沸点は 765℃，リチウムの融点は 180.54℃・沸点は 1347℃。多少ずれはありますけど，二次冷却系の水と出会う100℃くらいが融点で，核燃料と接触する部分は 1000℃くらいで沸点になるという共通点を持っています。
また，これらのアルカリ金属は熱伝導率，つまり熱を伝える効率も似ていまして，ナトリウムが 100℃で 88 k/W・m^-1・K^-1(以下，単位は省略)，700℃で 60で，カリウムが 100℃で 53，700℃で 32という数値です。
ところが，上に書いたように，アルカリ金属には水に触れると危険なアルカリを生じるという性質がありました。もともと，もんじゅが実用にならなかったのも，この一次冷却系にナトリウムを用い，途中のパイプが腐食したからだったのです。
それでは，ナトリウムに代わる物質はないでしょうか。実は身近なところにあったのです。「亜鉛」です。亜鉛は確かにナトリウムの３倍もの重さがあります。しかし，融点は 419.58℃・沸点は 907℃と，融点が多少高いものの，高温の一次冷却系ではこれ以下に温度が下がることは考えられません。また，熱伝導率も 100℃で 112，700℃で 66 と，決してアルカリ金属にひけをとりません。
それに一次冷却系に使われるということは，放射性同位体になる可能性が強いのですけど，ナトリウムも亜鉛もすぐに分裂してしまうという性質を持っています。例えばナトリウム 22 は半減期 約2.6年，ナトリウム 24 は半減期 約15時間で，亜鉛 62 は半減期 約9時間，亜鉛 63 は半減期 約38ヵ月，亜鉛 65 は半減期 約244日，亜鉛 69 は半減期 約56ヵ月です。このように物性のデータを並べてみると，一次冷却系のパイプを亜鉛用に頑丈に作れば，決して使えない材料ではないのです。
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http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY200603300197.html
「もんじゅ」の後継、巨大ナトリウム冷却炉
2006年03月30日13時10分
細長く、コンパクトにした新型高速増殖炉のイメージ図＝日本原子力研究開発機構提供 TKY200603300216.jpg
日本原子力研究開発機構は３０日、高速増殖炉の将来像として、「もんじゅ」と同じプルトニウムを燃料に、ナトリウムを冷却材にして、大規模で経済性に優れた１５０万キロワット級の蒸気発生器を二つ並べた巨大新型炉「ツインプラント」に絞って開発を進めるべきだとする報告書をまとめ、文部科学省の分科会に報告した。プルトニウムを単体で取り出しにくい先進湿式再処理技術の開発もめざす。
０１年度から５年間かけて実施した「実用化戦略調査研究フェーズ」の成果としてまとめた。もんじゅ事故の経験も踏まえ、配管や伝熱管を二重化し、距離も短くして原子炉容器をコンパクトにする。発電用エネルギーは１５０万キロワット級の蒸気発生器を二つ並べるツインプラントで得る。
もんじゅは着工から２０年経過、設計自体が経済的に見合わなくなった。報告書は、もんじゅでナトリウム取り扱い技術の研究を進め、１５年度ごろから実証試験施設の建設につなげるとしている。
経産省が昨年末、実用規模の新型炉を３０年ごろに造る構想を固めたが、報告書は小規模炉で実証して実用炉をめざすか、いきなり実用規模を造るか明確にしなかった。
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