さて、しつこいようですが重要なことなので、きょうも鳩山首相の「言葉」と「思い」について記します。今朝の朝日新聞は社説「首相の言葉 公約でないとは恐れ入る」で、鳩山氏が普天間飛行場について「最低でも県外」と訴えてきたことを「党の公約ではない」と言い出したことに対し、次のように書いています。
《政治家にとって言葉は命、という。ましてや、一国の指導者となればなおさらだ。鳩山由紀夫首相はその重みをわかっていない》《有権者からすれば、民主党代表であり、首相候補者である鳩山氏の公の発言は、公約以外の何ものでもない》《実行力の伴わない言葉の軽さも困りものだが、それが思慮の浅さに起因しているのではないかと疑われる点が、より深刻である》
確かに、昨年の衆院選の民主党マニフェスト(政権公約)には「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と書いてあるだけです。その意味では、鳩山氏の言い分は必ずしも「嘘」ではありません。
ただ、鳩山氏はマニフェスト発表の前も後も、自身の「国外・県外」へのこだわりを発信し続けていました。例えば、昨年5月26日の記者会見では以下のようなやりとりもありました。鳩山氏の「思い」の中では、県外移設は公約同様だったのだろうと思います。私は、この部分は連載企画「民主党解剖」第4部「新体制の行方・米の不信呼ぶ外交・安保」の中で取り上げたので、はっきり覚えています。
《記者:鳩山氏は、普天間飛行場の県外移設などが盛り込まれた民主党の「沖縄ビジョン」について維持すべきだと述べたが、(県外移設は)次期衆院選のマニフェストにも盛り込まれるのか。
鳩山代表:まず、沖縄ビジョンのマニフェストに入るかどうかということに関しては当然、今、直嶋(正行)政調会長を中心にマニフェストづくりを行っていただいているわけであります。私の感覚とすれば当然、この中での普天間の移設問題、望むは国外であるというところに関しては書き入れるのではないかと思っておりますが、私まだ、この段階において、直嶋政調会長がマニフェストの中心的に今、努力をしていただいている最中というところで、最後のところまでは至っていないと思っております。》
このときの記事では、鳩山氏が5月16日の代表就任記者会見でも「その(国外・県外移設の)考えを変えるつもりはない」と明言したことも触れています。鳩山氏は昨夜は、普天間問題の5月末までの決着期限に関し「それを変えるつもりはない」と語りましたが、もはや信憑性も何もありませんね。
また、今朝の産経の正論欄では、国際日本文化研究センターの猪木武徳所長が、次のように指摘しているのが目につきました。私も同様の歯がゆさと「loopyの壁」をずっと感じ続け、このブログでも書いてきたので共感を覚えました。
《無念なのは、首相自身が、そうした対応の何処に問題があるのかを自覚していないことである。自分は謙虚で誠意に溢れた人間だと思いこんではいないか。この思いこみは、「嘘」よりも始末が悪い。それはちょうど、「自分は正しい」と思いこんでいる頑固者のほうが、偽善者よりもはるかに困った存在であることに似ている。偽善者は、少なくとも、善が何かを知っており、あたかも善意の人の如く振る舞うことができるからだ》
…本当に困ったものです。この人がこの8カ月に満たない月日の中で壊した、日本にとって大事なものは本当に多い。国のトップリーダーが自ら、「知らなかった」と言いさえすれば、巨額の脱税も、日米同盟軽視によって東アジアの緊張を増大させたことも許されると本気で信じ、そう振る舞っていると。まさに、鳩山氏自身が言うように、「首相が大バカ者である国がもつわけがない」ですね。国は崩壊に向かいます。
今朝は夕刊当番で会社に来ているのですが、そこに届いた雑誌「明日への選択」(5月号)をめくっていて、次の部分が改めて目につきました。それは、鳩山氏の施政方針演説など重要演説の草案執筆者とされる劇作家の平田オリザ内閣官房参与と、松井孝治官房副長官が、今年2月29日の「友愛公共フォーラム発会記念シンポジウム」で語った内容の紹介です。以下、引用します。
《平田氏 鳩山さんとも話をしているのは(略)、やはり21世紀っていうのは、近代国家をどういう風に解体していくかっていう百年になる(略)。しかし、政治家は国家を扱っているわけですから、国家を解体するなんてことは、公にはなかなか言えないわけで、(それを)選挙に負けない範囲で、どういう風に表現していくのかっていうこと(が)、僕の立場。
松井氏 要はいま、平田さんがおっしゃったように、主権国家が、国際社会とか、地域の政府連合に、自分たちの権限を委託するっていう姿。流れとしてはそういう形になっているし、そうしないと、解決できない問題が広がっている》(※引用原文は週刊現代4月6日号の記事「鳩山さん、あなたはガンジーじゃないから」)
この発想に、鳩山氏の目指す外国人参政権付与や東アジア共同体構想、福島瑞穂氏や千葉景子氏の進める夫婦別姓、戸籍廃止などを加えると、やはり目指すは本当に主権国家たる「日本解体」なんだなと素直に納得できますね。そして、そこには見事なまでに安全保障の視点が欠けていると。鳩山氏はいつも「命を守りたい」と主張するわけですが、実は「命というものがなんだかよく分からない」人なのかもしれません。
by tropicasso
鳩山首相の主観的「誠意」と国…