ネットで知ったのですが、デヴィ夫人が普天間基地の問題に関して、そもそも基地ができた時に周囲に住んでいた人はいなかったんだから、基地を移転するよりも住民を移転させてはどうかとブログに書いたのだそうです。逆転の発想ですが、これは事実誤認と重要な視点が欠落したものの見方です。案外、デヴィ夫人と同じ考えの人っているんじゃないかと思い、今回の記事を書いてみることにしました。
確かに普天間基地が出来た当時は、周囲に住宅も学校もなかったはずです。周囲の住民は、そこに基地があるとわかっていて住宅を建てて住むことにしました。しかし当時は、普天間基地はほとんど使用されていなかったのです。米陸軍は沖縄を占領すると飛行場を建設しましたが、嘉手納基地をメインに使っていて普天間にはミサイルなどが配備されていました。
その後、冷戦の激化にともなって沖縄駐留部隊が増加し、嘉手納が一杯になったので海兵隊が普天間を使用することになります。この頃、すでに近隣には住宅が立ち並んでいたので、飛行機の離着陸には難があり、そこでヘリコプターをメインに使う海兵隊の基地として利用されることになりました。しかし軍の巨大化や装備の変化などがあり、普天間でも飛行機を使う事になり、現在に至ります。
基地があるとわかっていて住み始めたのだから、問題があるなら住民が出て行けばよいというのは乱暴です。確かに基地はありましたが、飛行機の離着陸が始まったのは住宅街が形成された後なので、この理屈は住民に対して酷でしょう。そしてこの考えには、重要な視点が欠落しています。それは、怖い思いをしているのは住民だけではないという視点です。
滑走路のすぐ近くに住宅や鉄筋コンクリートの学校があるということは、離着陸に失敗した時の緩衝エリアが全くないことを意味します。夜間のスクランブルなど事故が起こりやすい環境で、ミスをすれば即大事故に繋がるという環境で飛行機を飛ばしている米軍も怖い思いをしているのです。ですからデヴィ夫人が言うように住民全員が出て行っても、米軍からすれば何の問題も解決しておらず、周辺の土地を借り上げて平らに整地しなければならないのです。
それを考えると、住民全員を移転させるよりも基地を移転させた方が安上がりになる気がします。そして大事なのは、この移転問題は日米の双方が望んでいたことなので、交渉次第では日米の双方が歩み寄る余地があったということです。しかし約束を守ると言いながら、一方的に約束を反故にしようとする鳩山政権のやり方は、最悪のアプローチでした。アフガニスタンやイラク問題で米軍の指揮官としての資質を問われているオバマ大統領にとって、もはや絶対に妥協できないレベルになってしまいました。
普天間は、もはやどのように決着しても遺恨を残します。5月の決着すら絶望的となると日米関係は急速に冷めていき、経済的な損失も考えられます。ここで何度か書きましたが、今でもアメリカは日本の商売にとって最大の(ん?二番目になったんでしたっけ?)お得意様です。内需が冷えて外需頼みになっている現在、その外需の最大の顧客との仲をいたずらに悪くすることに、何のメリットもありません。
今回の民主党の対応は、ただただ国益を損ねるだけだと思います。