高校野球表紙私と高校野球

私と高校野球 2001年(H13)
習志野

習志野を倒せ(四国の野球ファン)

 私は高知生まれだ。だから当然、故郷・高知の代表校を応援する。四国の野球は好選手が多く、豪快さあり緻密さありで好きだ。千葉の野球もこれに通じるものを感じる。往年の銚子商や習志野は言うまでもなく、その後の印旛や拓大紅陵、市立船橋なども同様だ。それでいつの頃からか、千葉代表も好んで応援するようになった。別に親戚や知人が千葉にいるわけではないのだが。

 2001年夏、日大三が強打で優勝した年。日南学園の寺原が150キロを越える豪速球で話題になった年だ。この年のベストゲームは、誰が何と言おうと明徳義塾-習志野だと思っている。日大三や準優勝の近江、寺原の日南学園も、明徳義塾や習志野と対戦していたらどういう結果になっていたか分からないだろう。
 千葉の野球のファンの私だが、故郷・高知と対戦する時だけは話しは別だ。私にとって千葉は倒すべき敵である。この試合を振り返ってみたいと思う。(地元紙の馬渕監督のインタビューを参考にしました)

 この年の明徳義塾は優勝を本気で狙えるチームだった。実際、この時の主力が翌年に全国制覇を達成している。
 相手は千葉が誇る名門・習志野。試合前の段階では、明徳と比べると派手さはないから大した相手ではないように見る人が多かった。私も総合力では明徳の方が確実に上だと思う。
 しかし、習志野の初戦、同じ四国の強豪・尽誠学園との試合は、見れば見るほど習志野の恐ろしさが分かる試合だった。習志野にしてみれば「辛勝」かもしれないが、対戦相手にしてはとても嫌な相手に映る。

 まず何と言っても厄介なのはエース佐々木だ。絶対的に自信を持っているフォークをどう攻略するか。
 尽誠学園はフォークを捨てる作戦だったようだが、それでも手を出し凡退していた。尽誠学園ほどの打線を持ってしても引っかけてしまう恐ろしい球だ。その上、フォークを意識させておいて直球が来たりして、捕手のリードも一流だ。
 尽誠と明徳の打力はそう変わらないだろうから、同じことをしたら同じ結果になってしまう。更なる工夫が必要だ。
 打席の一番後ろギリギリに立って球を見極める。捕手を下がらせれば落ちる球はワンバウンドになりやすく、バッテリーもやりにくいだろう。充分に引き付けてセンター方向へ打ち返す意識が重要になる。明徳クラスの打線ならそれは可能だ。

 佐々木投手は千葉大会で60イニングスを投げ四球は6。制球が抜群と分かる。実際、尽誠戦ではカウントを稼ぐ球ですらかなり厳しいコースに来ている。だがこの抜群の制球力を表わす数字は、見方を変えればこれはフォークに手を出しての空振りや凡退が多かったという表われではないだろうか。
 絶対の自信を持っているフォークに手を出さないだけで「いつもの手が通用しない」と思わせ、バッテリーを動揺させることが出来るのではないか。
 フォークに手を出さずボールが先行すれば、必ず直球でストライクを取りに来る。これは狙える。

 もう一つは走者だ。連打は難しいだろうから、出た走者を有効に使いたい。佐々木投手のセットポジションのクセを見抜くことが出来るのではないかと試合前に馬渕監督が指摘していた。さすがにハイレベルになると違う。変化球なら走り、直球ならエンドランなどを使い揺さぶることが可能になって来る。佐々木包囲網を作りたい。

 習志野は守りが良いから守り合いになるかもしれない。ミスをしたら負ける。習志野も色々研究をして来るだろうし、田辺の低めのスライダーは振らないだろうが、習志野打線は鋭い変化球には対応しきれていないから、エース田辺が本来の投球が出来れば抑えられるはず。
 エンドランなどもよく仕掛けて来るので、そのあたりの気配は馬渕監督が見極められるかどうか。百戦錬磨の監督だけにぬかりはないと思う。

 勝負は3〜4点勝負。出来れば先手をとって習志野バッテリーを慌てさせ本来のリズムで投げさせないようにしたい。


 試合結果はご存知の通りだ。予想通りの守り合い。
「フォークは振ってないでしょう?」馬渕監督の試合後の談。

 8回の明徳のチャンス。2死二三塁で筧。フォークの見極めは出来ている。くさい球はカットし続けファール。しかし最後は左飛。三振を恐れ、狙い球を絞る余裕はなかった。
 先頭打者はほとんど出せず、走者で揺さぶることは出来なかった。

 ピンチらしいピンチはなかった。やられたのは1球だけだ。ピンチでないからタイムアウトも取れなかった。

 習志野は強かった。そして本当にハイレベルの好試合だった。習志野は優勝するのではないかとすら思えた。同時に、この試合で明徳はひと回りもふた回りも大きく成長することが出来た。それが翌年につながったのだろう。主力が2年の時点で習志野と対戦出来て本当に良かった。

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