名城も陥落！再戦返り討ちならず…ＷＢＡ世界Ｓフライ級戦

１２回、カサレスの左フックを浴びる名城（左）

名城（左）はカサレスに肩を組まれ、悔しそうな表情

　◆ＷＢＡ世界スーパーフライ級タイトルマッチ　▽１２回戦　○ウーゴ・カサレス（判定　３―０）名城信男●（８日・大阪府立体育会館第一）　チャンピオンの名城信男（２８）＝六島＝が３度目の防衛に失敗した。昨年９月以来の再戦となる指名挑戦者ウーゴ・カサレス（３２）＝メキシコ＝に手数で押され、右ストレートも不発。２人のジャッジが６点差をつける０―３の判定負けを喫した。０７年５月以来２度目の王座陥落も、名城は再戦を含めた再起を宣言。名城の戦績は１３勝（８ＫＯ）２敗１分け。カサレスは３１勝（２２ＫＯ）６敗２分け。日本ジム所属の世界王者は４人になった。

　Ｖ３の夢を打ち砕かれた。１０回。ＫＯ狙いの名城にカサレスのアッパー気味の左フックがさく裂した。「あれが効いた。スタミナもパンチも落ちていなかった」。血気を奪う一発。最後まで突進して伝家の宝刀の右ストレートを繰り出したが、ほおを捕らえることはなかった。

　１、２回は単発ながら名城が好打する滑り出し。「追いつけると思った。最後までうまく逃げられ、ごまかされた」。カサレスは後半にガス欠した昨年９月の対戦時とは別人。前回のイメージを払しょくできないまま、テクニックと手数で完敗した。「勝ちはないと思った」。リング下の智子夫人（２８）をちらりと見た後、観客に頭を下げた。

　不器用な戦い方、愚直な生き方でここまで来た。対戦相手がリング禍で亡くなる悲劇を乗り越え、史上最短の８戦目で世界奪取。幼少時からのぜんそくと今も付き合いながら、陥落後に返り咲いた。１週間前に持病の腰痛に痛み止めの注射を打って臨んだ一戦。敗戦後の控室では「これで一般ボクサーに戻った」とつとめて明るく再起を宣言した。

　奇跡を起こしたかった。昨年１１月、新型インフルエンザにかかった後援者の５歳の次男が意識不明に陥った。合宿に同行するほど名城が大好きだった「テンちゃん」。今も病床では、名城の入場曲がかけられている。「もう一度ベルトを取るつもり」。３度目の王座返り咲きは、小さな応援隊長との約束でもある。

　今年、日本選手が臨んだ世界戦は３勝４敗。カサレスと同ジムのモンティエルに敗れた盟友の長谷川穂積の無念は晴らせなかった。それでもまだプロ１６戦。「できるなら再戦したいし、次は海外でやる夢をかなえてほしい」と敵地メキシコへ乗り込む気概もみせた。覇権奪回へ、険しい２度目の再起ロードも望むところだ。

　◆名城　信男（なしろ・のぶお）１９８１年１０月１２日、奈良県奈良市生まれ。２８歳。近大在学中の２００３年７月にプロデビュー。０５年４月、日本スーパーフライ級王座獲得。０６年７月にＷＢＡ世界スーパーフライ級王座を初奪取し、辰吉丈一郎に並ぶプロ８戦目の史上最短タイ記録を樹立。１度防衛後の０７年５月に陥落、０８年９月に再奪取した。家族は妻。アマ戦績は３８勝１９敗。１６４センチの右ファイター。