広島

　古書店「あき書房」（南区皆実町５）が、１９２７（昭和２）年の景勝地、鞆の浦（福山市）周辺の商店や旅館などがひしめく街の様子を記した地図「廣島縣沼隈郡鞆町　営業別明細図」の復刻版を発売した。

　地図は縦５９センチ、横８３センチ、大日本東京交通社の発行で、当時の価格で３０銭。港町に約２３０軒の店が連なり、船にまつわる鉄工業者、神社仏閣も多い。古くから交易路の要衝として知られ、漁師町としても発展し、特産の保命酒の酒造場も戦前から栄えていたさまが見てとれる。

　当時の旅館「常盤館」が配っていたとみられる「鞆の浦案内」というパンフレットが付録。鞆の浦の鳥瞰（ちょうかん）図の絵がカラフルに描かれている。３０年に画家・吉田初三郎が描いた「鞆之浦」を模したものとみられ、桜が咲き乱れる山々と、船が行き来する港の間に、「常盤館」や観光地などを記している。書店主の石踊一則さん（６３）は「航路が信頼され、一番華やかだった時代の鞆を見て、現在の姿と見比べてほしい」と話した。１０５０円。問い合わせはあき書房（０８２・２５５・１９１６）。【井上梢】