指紋を偽造し日本へ密入国、飲食店従業員ら検挙(上)
接着剤を利用し指紋を偽造
横浜市で飲食店の従業員として働いていたB容疑者(32)は、2008年1月、不法滞在者の取り締まりで検挙され、韓国へ強制送還された。その後、日本へ戻るための方法を模索したが、なかなかうまくいかなかった。07年末、日本政府が入国審査を強化し、指紋などを認識する生体認証システムを導入したためだ。日本から送還された際、右手の指紋を登録されていたので、写真を張り替えたり、個人情報を書き換えたりしただけの偽造パスポートだけでは、日本への密入国はほぼ不可能だった。
だが、それから間もなく、横浜の飲食店の店主が「いい方法がある」と告げ、電話番号を教えた。番号の主は韓国国内の指紋偽造業者で、B容疑者に対し、「1300万ウォン(現在のレートで約103万円、以下同じ)を支払えば、特殊な技術で作成した偽造指紋を指にはめて、日本へ密入国できるようにする」と持ち掛けた。指紋偽造の専門家、H容疑者(47)が開発したというシステムは、意外にも単純なものだった。偽造パスポートの持ち主の指先に接着剤を塗り、乾かした後そっとはがせば、透明な膜が指先に付着した状態になるため、これを悪用したのだ。
接着剤によって形成された、厚さが1ミリにも満たない透明な膜には、指紋が鮮明に刻まれる。密入国者は自分の人差し指に、接着剤の役割をするシリコンを塗り、そこへ接着剤によってできる膜を張り付けることで、指紋を他人のもののように見せ掛けることができる。使用する接着剤は、文房具店で販売されている一般的なものだが、H容疑者らは、指紋の隆線(山型の部分)まで再現できる接着剤を見つけるため、何度も実験をしたという。
B容疑者は、日本へ向かう飛行機に乗る1時間前、偽造した指紋を人差し指の先に張り付けた。あまり早く張り付けると、接着剤によってできる膜が割れる可能性があるためだ。H容疑者らは「手の汗や体温により、(接着剤によってできる膜が)溶ける可能性があるため、冷たい瓶をそっと握っているように」と告げた。こうして、B容疑者は08年10月、偽造したパスポートと指紋で、羽田空港の入国審査場を無事に通過した。
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