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大規模増資でCSKに反旗、ベルシステム24のなぜ

2004年8月3日

「こんなことが許されるのならば、日本の資本主義はいったいどうなるのか」。コールセンター業務最大手のベルシステム24の親会社、CSKの青園雅紘会長は記者会見の席で声を張り上げた。ベル24が突如、大規模増資を発表し、親会社に反旗を翻したからだ。実現すれば、株主に対し企業が反乱を起こす形で経営が変わることになる。両社の矛は簡単に収まりそうにない。


ソフトバンク子会社を買収へ


CSKが開いたこの会見の約6時間前、ベル24は取締役会で日興コーディアルグループ系の投資会社NPIホールディングス(東京都千代田区)を割当先とする1042億円の増資を決議。調達資金で、コールセンター業務を手がけるソフトバンクグループのBBコール(東京都中央区)の全株式を取得し、同グループからコールセンター業務を5年半独占的に引き受けると発表した。


今回の第三者割当増資でCSKの持ち株比率は39.2%から19.0%に下がり、CSKは筆頭株主の地位を失う(下図)。にもかかわらず、ベル24の社外取締役でもある青園CSK会長は、蚊帳の外に置かれていた。CSKは即日、東京地方裁判所に増資差し止めの仮処分を申し立て、会見に同席した申立代理人の久保利英明弁護士は「これだけ巨額の第三者割り当てをしようというのは、どう考えても主要目的は現経営陣の地位保全」と激しく非難した。


CSKは野村証券出身の青園会長の下、創業者で2001年3月に亡くなった故大川功氏の路線を大きく修正。グループ再編を通じて企業向けビジネスに軸足を移し、昨年のセガ売却でグループ再編に一応のメドをつけていた。


情報システム業界のビジネスは、かつて企業向けのシステム開発や保守・運用が中心だったが、顧客企業のニーズに対応し、業務の一部を丸ごと引き受けるアウトソーシング(業務の外部委託)へと事業領域が広がっている。中でも人手やノウハウの蓄積が必要なコールセンター業務は、その中核だ。CSKにとってはベル24を手放す理由はなく、むしろ喉から手が出るほどノウハウが欲しい。


ベル24の園山征夫社長は、もともとCSK出身。その園山社長が親会社と対立姿勢を鮮明にしたのはなぜか。


青園会長が会見で「ベル24は独自路線を貫き、聞く耳を持たなかった」と話したように、1987年に社長に就任して以来、業界最大手の地位を築き上げた園山社長は「故大川氏に認められた人物で、もともと青園会長と距離があった」(ベル24の顧客である金融機関の営業担当者)という。


「無理な要求にも、きめ細かく対応してくれる」(同)。ベル24をこう評価する顧客の間には、今回の増資が園山社長の念願だっただろうと、その胸中を推し量る声が少なくない。


CSKと拠点重複、路線にズレ


しかも、両社の路線の違いは平行線どころか拡大の一途だった。CSKも、パソコンメーカーなどの委託を受けてパソコンやインターネットの利用者に技術サポートを提供するコールセンター業務を広げ、2002年にはベル24が拠点を置く福井県や、建設中だった島根県に相次いで地域会社を設立した。対象とする顧客企業の業種が異なったり、雇用確保を狙った地方自治体の誘致合戦が背景にあるとはいえ、拠点の重複は否めない。


園山社長は、増資発表の翌日に開いたアナリスト向け説明会で、ソフトバンクとの業務提携の収益性の高さを示して「CSKも重要な株主。できれば協力してもらいたい」と語った。だが青園会長は「(増資決議に)賛成した取締役に対する措置はある」と半ば制裁の可能性にも言及し、両経営陣の関係はもはや修復不能と見られている。


長年のすれ違いの果てに起きた資本の論理の対立は、司法の場に持ち込まれた。CSKが求めた増資差し止めの仮処分の申し立てに対しどのような判断が下されても、どちらかがさらに争う公算は大きい。決着にはなお時間がかかりそうだ。(大豆生田 崇志)

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