日興コーディアルグループが2005年3月期決算で、孫会社の特定目的会社(SPC)とSPCが買収したコールセンター会社「ベルシステム24」を連結決算とせず、不透明な会計処理を行っていたと、05年末に一部で報道された。その問題が、安倍政権の発足とともに動き出すのか、関係者の関心を集めている。
大手月刊誌が「粉飾の疑いが濃い」などと報道し、06年3月には国会でも取り上げられたが、今もって白黒がはっきりせず、決着がついていないからだ。報道で指摘された会計処理が違法なのか適法なのかの判断は、最終的に金融庁が行うことになる。担当大臣はどう判断するのか、秋の臨時国会で改めて政治問題となるのかなど、関係者は気をもんでいる。
日興コーディアル証券を中核とする同グループの粉飾決算疑惑を報じたのは、大手月刊誌のほか、日刊紙では05年12月31日付の東京新聞だった。同紙によると、SPCなどの連結はずしで、同グループがベル24の買収で負担すべき「のれん代」(営業権)など1,440億円が開示されず、05年3月期決算に計上されるべき147億円の記載がなかったとされる。
この連結はずし問題は、06年3月16日の参院財政金融委員会で、民主党の峰崎直樹氏が取り上げた。当時の与謝野金融担当相は「問題があれば厳正に対処したい」と答弁、同グループの決算を改めて調査する考えを表明した。
問題の焦点は、企業買収に用いたSPCと買収先の企業(ベル24)を連結対象とすべきか否かの解釈。国会答弁で与謝野金融担当相は「ベンチャーキャピタル(VC)が投資育成目的で株式を所有している場合は連結対象にならない」との考えを示した。だが、峰崎氏は「VCは未公開会社に投資し株式公開させて利益を得るものを指す」と指摘し、ベル24が東証一部上場企業だったため、SPCとともに連結対象にすべきだと主張した。
実は、この粉飾決算疑惑の報道や国会質問は、日興内部から出た怪文書がベース。怪文書は日興と暴力団との関係などを克明に記しており、日興内部の関係者しか知りえない情報が社内資料やメモとともに流出した。05年の月刊誌や日刊紙の粉飾決算疑惑報道は、これらの社内資料を「丸写しにした」(関係者)とされるだけに、信憑性は高いとの見方もあり、関係者は戦々恐々としていた。
報道から9カ月。国会質問と与謝野答弁からも半年以上が過ぎても、新たな進展は見られない。日興サイドは「金融庁から何も音沙汰ないということは、決算に問題がなかったということではないか」と、強気の姿勢を崩していないが、金融庁の調査がどこまで進んでいるのかいないのか、水面下の状況はうかがえない。新大臣のリーダーシップが発揮されるのか注目されている。
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