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共に生きる・トブロサルダ:大阪コリアンの目/39 /大阪

 ◆虐待やDV-SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の試み

 ◇暴力の悪循環断ち切るために、親の自己再生を支援

 児童虐待の痛ましい事件が続いている。児童虐待にはいくつかの傾向がある。最近目立つのは子連れの再婚で、継父母による「躾(しつけ)」と称する子どもへの虐待だ。

 特に、母子家庭を取り巻く環境は厳しく、経済的困窮を経験しての再婚の場合、夫婦間に歪(ゆが)んだ依存関係が生じやすく、そこにDVが絡めば、恐怖により実母自身が継父の虐待に同調してしまう場合も少なくない。

 また、私のスクールソーシャルワークの経験から言えば、核家族化が進み、閉鎖的な家庭環境に育った人に「親が最も抑圧的であった」と振り返る人は多い。そんな生い立ちを持つ人が親となり、子どもとの向き合い方がわからないまま感情を抑制できず、暴力を日常化しているケースも見られる。親からの抑圧の記憶が虐待の原因となっている。

 大阪市東成区に母子生活支援施設「東さくら園」がある。ここにはさまざまな出来事を経て入所した母子たちが暮らしている。家庭内暴力から避難してきたり、虐待を経験した人たちもいる。

 生活の安定を取り戻し、自立できる日をめざす支援が行われているが、その一環としてSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)プログラムが実施されている。

 プログラムのトレーナーを務める藤木美奈子さんは、テーマを決めて場面を例示し、出来事を偏らずに多面的な捉(とら)え方ができるよう、受講する入所者の対話を促していく。

 受講生は、感情を押し殺して生きてきた自分や、「あの出来事は私にとって虐待だったのだ」と気付くことで、何に苦しんできたのかを知る。藤木さん自身も虐待の被害経験がある。被害者も加害者も、暴力の原因を知り、その克服のための自尊感情の回復が重要だと強調する。

 痛ましい事件が続くことで、子どもの緊急保護への関心は高まりつつある。だが、子どもを一時保護しても、親自身の再生がなければ、危険な家庭が子を待っているだけだ。

 藤木さんは子育てにストレスを感じたとき、一時的に子を預けられるなど虐待に親が陥らない支援と、虐待に陥った親に関与し、再生していく支援の両方が重要だと語る。

 「東さくら園」の入所者で暴力に苦しんできた人々は、再び被害にも加害にも巻き込まれないよう自己再生をめざす。その支援の一環で実施されるSSTは、子どもが犠牲になる虐待を減らしていく効果的なプログラムだと言える。

 ただ、行政の関心はまだまだ薄い。子どもを守ることは親を守ること。そこを糸口に支援制度を研究する時期が来ているのではないだろうか。<文と写真・金光敏>

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 ■人物略歴

 1971年、大阪市生野区生まれ。在日コリアン3世。大阪市立中学校の民族学級講師などを経て、現在、特定非営利活動法人・コリアNGOセンター事務局長。教育コーディネーターとして外国人児童生徒の支援などに携わる。

毎日新聞 2010年5月1日 地方版

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