【ブリュッセル=井田香奈子、アテネ=南島信也】欧州連合(EU)のユーロ圏16カ国は2日夕、緊急の財務相会合を開き、財政危機に陥ったギリシャに対し、国際通貨基金(IMF)と協調し、3年間で総額約1100億ユーロ(約14兆円)の融資を行うことを決めた。これに先立って、ギリシャ政府はEU、IMFが求めていた財政再建策を閣議決定。今後3年間で支出を約300億ユーロ(約3兆7千億円)削減するとした。
1999年の単一通貨ユーロ発足後、ユーロ導入国への融資の発動は初めて。昨年10月に危機が表面化して以降、ユーロの財政規律を保つため各国はギリシャに自助努力を促し、直接支援には慎重だったが、ギリシャ危機がユーロ圏、さらに世界に拡大するとの懸念から追い込まれた。
3月のユーロ圏首脳会議で、各国は欧州中央銀行(ECB)への出資割合に準拠した額を直接融資し、ユーロ圏総額とIMFの拠出割合を2対1とすることに合意している。最大拠出国のドイツなど議会の手続きが必要な国もあるが、当面の融資は大量のギリシャ国債の償還期日の19日までに実施される見通し。
財務相会合でEUの欧州委員会はギリシャの再建策を評価、各財務相に協調融資の発動を求めた。ギリシャは今後、EUとIMFの管理下で財政立て直しを図る。
パパンドレウ首相は2日午前、テレビ中継された緊急閣議の冒頭で、EU、IMFとの協議で合意に至ったと明らかにし、「国家の惨事を避けるために、すべてのギリシャ国民が犠牲を払わなければならない」と国民に理解を求めた。ギリシャの財政再建策は融資の前提となっていた。
閣議で決まったのは、全労働人口の25%を占める100万人の公務員の3年間の昇給や新規採用の凍結、賞与廃止など。年金受給額も約30%削減する。3月末に19%から21%になったばかりの付加価値税もさらに23%に引き上げる。
ユーロ圏各国は当初、今月10日にユーロ圏の首脳会議を開いて融資を決める予定だったが、米格付け会社がギリシャ国債を「投資不適格」に格下げしたのをきっかけに世界同時株安となるなど市場が動揺したため、対応を急いだ。