フル稼働で生産されているモヤシ=栃木県真岡市の成田食品栃木工場、河野写す
安くておいしい家計の味方のモヤシ。天候不順による野菜の高値で、存在感を増している。生産工場はフル稼働で殺到する注文に応え、人気に目をつけた食品メーカーや出版社の「モヤシ周辺ビジネス」も熱い。
モヤシ生産最大手、成田食品の栃木工場(栃木県真岡市)では10メートル四方の育成室一面に真っ白なモヤシが成長していた。コンピューター制御で水をやり、種まきから9〜10日間で出荷できる。
春からの野菜の高値で注文が相次ぎ、1日平均58トン、250グラム入りを約23万パック生産する。工場長の鈴木与市さん(43)によると、4月の出荷量は昨年比3割増。スーパーからの注文が途切れない。
人気の背景には、供給量が落ちないことによる価格の安定がある。総務省の家計調査によると2008年以降、100グラム当たりの平均価格は15〜18円。1人当たりの1カ月の購入量を毎年2月時点で比べると、08年は151グラム、09年は170グラム、今年2月は187グラムと確実に増えている。
関連商品も続々と誕生している。キッコーマンは08年8月に調味料「もやしのねぎ味噌炒(みそいた)め」を発売し、09年には4億円を売り上げた。今年4月は昨年と比べ、2割増の売り上げを記録するなど好調だ。
ラーメンチェーンの一風堂は昨年、店内に置いている「辛子もやし」のソースの販売を始めた。今年3月の販売本数は約2万本。売れ行きは右肩上がりという。
レシピ本も、モヤシ料理にスポットを当てる。角川SSコミュニケーションズが08年3月に発売した「スゴイ! もやしレシピ」は13万部を記録。昨年10月に講談社から「エライ! もやしのおかず&つまみ81」を出版した料理家の須永久美さん(38)は「モヤシはカロリーも味も控えめで、いろんな素材となじみ、料理の幅を広げる。具材に混ぜればボリュームが増すことも人気の秘密でしょう」と話す。(河野正樹)