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首相の「県外移設」潰え袋小路へ なお自覚薄く
「徳之島へは部隊移転であっても1千人以下だ。部隊が駄目ならば訓練だけでもご理解いただける範囲で受け入れてもらいたい」
首相官邸の大会議室で、首相は徳之島の3町長に切々と協力を訴えた。
だが、3町長は島内外の約2万5800人の署名を携えて上京しており、安易な妥協は許されない。徳之島空港を出発間際に「官邸ではお茶にも絶対に口を付けないようにしよう」と申し合わせたほどだ。首相は「ご迷惑をかけて申し訳ない。日米安保や沖縄の負担を考え、理解していただけないか」と畳みかけたが、3町長は「どんな機能も訓練も受け入れることはできない。もう会うことはない」と絶縁を宣言した。
首相が県外移設の「切り札」として温めてきた徳之島への移設構想はこれでついえた。
徳之島側が初めからこれほど強硬だったわけではないが、政府が移設計画を一向に明かさなかったことに不信が募った。4月18日に徳之島で1万5千人規模(主催者発表)の反対集会が開かれたことを受け、滝野欣弥官房副長官が4月20日、3町長に平野博文官房長官との会談を打診したが、「不誠実な人に会うつもりはない」と拒否。策に窮した首相は4月28日、徳之島に強い影響力を持つ徳田虎雄元衆院議員を訪ねて仲介を依頼した。
だが、首相が徳田氏に約2500人のヘリ部隊のうち最大1千人を徳之島に移す移設案を打ち明けたこともあり、地元はさらに反発。3町長と会談しても譲歩を引き出せる可能性は皆無だったが、それでも首相は会談を強く望んだ。
首相は普天間飛行場すべてではなく、機能分散ならば自治体側は受け入れてくれるとの思いがあった。4月中旬にはこんな愚痴を周囲にこぼしている。
「徳之島はバックアップに使うだけのつもりなんだが、なぜ理解されないのか」
だが、具体案を示さず、「思い」だけを訴えても理解は得られない。首相には自らの発言のブレやあいまいな態度が不信を助長しているという自覚もなかったようだ。
4日の沖縄訪問に続き、3町長との“直談判”も失敗に終わったことで政府・与党のきしみはさらに広がる。社民党党首の福島瑞穂少子化担当相は7日の閣僚懇談会で「県内移設はノーだ」と断じ、決着の先送りも求め始めた。国民新党代表の亀井静香郵政改革・金融担当相も米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市辺野古)に杭(くい)打ち桟橋方式で滑走路を建設する浅瀬案を「辺野古の海から逃げて辺野古に帰ってくることはあり得ない」と反対を表明した。
もはや5月末にどんな決着を付けようと「職を賭す」しかない。首相はそんな袋小路に自ら迷い込んでしまった。(加納宏幸)
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