かねて早熟化、低年齢化が指摘される若者の性。「最近の若い子はふしだらだ」と嘆く人も多いだろう。だが、その一方で、恋人に触れられず、セックスをあきらめ、性に関心を持てなくなった若者たちも急増しているのだ。「最近の......」ではすまされない、深刻な性の実態を追った──。
性欲はある。でも、
「セックスは面倒くさい」
という男性がいる。
都内に住む会社員の男性(35)は、19歳のときに「大人のおもちゃ」を使ってマスターベーションして以来、女性とのセックスで快感を得られなくなったという。
「はっきり言って、自分のペースでイケる『おもちゃ』があれば、女性は要らないですね。セックスではイケないので、彼女に気を使う。相手を喜ばせる必要のない自慰行為をするほうが気楽です」
セックスが原因で、彼女から別れ話を切り出されるたびに、「病気だ」と言ってかわしてきたという。
街角で若者の性の悩みに答え続けて9年。赤枝六本木診療所の赤枝恒雄院長は、こう解説する。
「膣内で正常に射精できない障害を総合して『膣内射精障害』と言い、早漏、遅漏の男性も含まれます。原因としては、女性に対する偏見、トラウマなどの心因的な場合と、刺激の強いオナニーなどに慣れ、膣では刺激が足りないなどの肉体的な理由が考えられます。最近のオナニーグッズは本当によくできている。自慰で快楽を追求することに慣れてしまったら、女性の膣では刺激が物足りなくなるケースも増えるでしょう」
欲求があるだけマシかもしれない。それどころか、最近では若者の性欲の減退も指摘されている。
財団法人日本性教育協会が全国の中学、高校、大学生を対象に1974年から行っているアンケート調査で、「性的なことに関心をもったことがあるか」とたずねたところ、「ある」と答える学生が99年から男女ともに急激に減っているのだ。
都性研実態調査委員会の調査でも、都内の中学3年生に「性的接触(性行為)をしたいと思ったことがあるか」とたずねたところ、「ある」と答えた男子は、99年からほぼ半減していることが判明。中3女子も同様に減少しているという(グラフ)。
いったい、何が起きているのか。若者の声に耳を傾けてみよう。
「(相手を)いいかなって思って、付き合ってみるけど、汗をかいたり、抜けた髪の毛を肩から振り払ったりする姿を見ると幻滅しちゃう。気持ち悪くなって、2、3日で別れちゃうの」
こう話すのは都内在住の女子大生(20)だ。
この女子大生が"生身の恋愛"より夢中になっているのが「乙女ゲーム」。女性向け恋愛シミュレーションゲームの総称で、プレーヤーの女性が男性を射止めるまでのプロセスを楽しむゲームだ。ゲーム誌「ファミ通」によると、06年のゲームソフト売り上げトップ20のうち、実に7本がこの乙女ゲームだったという。
「恋愛もゲームで十分」
と話すフリーターの女性(21)も、乙女ゲームにハマっている一人だ。
「私は一生セックスしないって決めたの。でも、エッチなモノを見るのは好きだよ。AV(アダルトビデオ)や本で勉強したから、どんなセックスが男を喜ばすかも知ってる」
"耳年増"を思わせる発言である。記者が「男の人はどんなセックスが好きなの?」と問うと、臆面もなくこう答えた。
「AVみたいなの(笑い)。恥ずかしがる姿もいいらしいよ。受け身でいいのは最初だけ。だんだん激しくしなきゃダメなんだって。めんどくさそう。でも、私はそんなことするタイプじゃないし、したくない」
男性にも、「セックスをしない」と胸を張る人がいる。
「全国童貞連合」という組織をご存じだろうか。童貞なら誰でも入会できる組織で、99年の発足以来、会員は600人を超えている。もともとは、「童貞の卒業」を目標に発足した組織だが、最近になって生涯童貞を宣言する「保守派」が出現したという。
約6年前に入会した「保守派」のフリーター男性(30)は、こう話す。
「私は経済力も責任力もない。子どもができると養えないので、セックスしません。そもそも、私のように、社会性がなく、見た目も悪い人間は、女性から選ばれない。"必然的童貞"なんです。世間は『恋愛しないと人間じゃない』とばかりに恋愛至上主義を押し付けますが、恋愛しなくても生きていけますよ」
この男性は、前出の「乙女ゲーム好き」の女性たちに共感を覚えるという。
「ゲームも立派な恋愛ですよ。キャラクターは、きれいでスタイル抜群。声はイケてるし、優しくて包容力があるので、こちらは傷つかない。むしろ、ビジュアルでは、バーチャルに勝るものはないです。二次元の恋は妄想や思い込みだと言うけど、そもそも恋愛ってそういうものでしょう?」
"純愛"の裏には 出会い系の罠が
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