首相、県内移設表明 普天間の「公約」破棄

徳之島にも要請へ 知事、民意尊重求める

仲井真弘多知事(右)と会談する鳩山由紀夫首相(左)=4日午前、県庁(代表撮影)

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2010年5月5日 09時55分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 鳩山由紀夫首相は4日、就任後初めて来県し、米軍普天間飛行場移設問題で仲井真弘多知事と会談した。首相は「沖縄の皆さんにも負担をお願いしなければならない」と県内移設を公式に表明した上で「おわび申し上げる」と謝罪した。首相は同日夕、昨年の衆院選前に「最低でも県外」と発言した〝公約〟について「党ではなく、私自身の(民主党)代表としての発言だ」と釈明し、公約違反には当たらないとの認識を強調。県外・国外移設を事実上、撤回した。徳之島(鹿児島県)にヘリ部隊移設か一部訓練の移転を目指し、地元に要請する意向も示した。

 仲井真知事は「(県内移設に反対した)県民大会の思いが率直な県民の声。きちっと受け止めていただければありがたい。公約に沿った解決策を示してほしい」と要望した。

 首相は高嶺善伸県議会議長、稲嶺進名護市長と個別に会談したほか、翁長雄志那覇市長ら米軍基地を抱える19市町村長と懇談。「負担をお願いする」と相次いで県内移設に言及し、謝罪を繰り返した。

 市町村長や市民団体は首相の発言に一斉反発しており、移設協議は暗礁に乗り上げる可能性が高い。首相は本土復帰記念日の15日に再訪問を検討しているが、5月末までの決着は極めて困難だ。

 首相は知事との会談で、普天間のすべての機能を県外に移設することについて「現実問題として難しいということに直面している」と説明。国外移設は「なかったわけではないが、抑止力という観点から難しいという思いになった」と述べ、県外・国外ともに断念する意向を伝えた。

 高嶺議長との会談では「沖縄の皆さまにも徳之島の方々にも率直に基地に関する負担、協力を願えないかという思いだ」と述べ、県内と徳之島を移設先とする考えを鮮明にした。

 首相の初来県を受け、知事との会談場所に近い県民広場には市民団体ら約600人が集まり、首相に県外移設を貫くよう訴えた。

 首相は普天間飛行場に近接する普天間第二小学校で市民との対話集会にも参加。日米地位協定の環境条項の創設や、本島東のホテル・ホテル訓練区域返還の議論に取り組む考えを示した。

名護市長は拒否
辺野古回帰「沖縄を差別」

 【名護】稲嶺進名護市長は4日午後、鳩山由紀夫首相と市内で会談し、米軍普天間飛行場の移設先について「辺野古に戻ってくるようなことがあっては絶対にならない」とあらためて移設反対の意思を伝えた。県内移設を示唆した鳩山首相の発言には「県外と言ってほしかった。残念で心外」と述べ、「いかなる施設であっても、これ以上の基地の負担は受け入れられない。沖縄に対する差別でもあるのではないか」と強い口調で遺憾の意を示した。

 鳩山首相は「選挙の時に申し上げた言葉の重みも理解している」と県外移設を約束した自らの発言にふれた上で、「抑止力の観点から沖縄や周辺の皆さま方に引き続きご負担をお願いせざるを得ない状況になってきている」と述べた。

 また「海というものを汚さない形での決着というのものがないか、模索することも重要」とし、辺野古沿岸部沖合の浅瀬にくい打ち桟橋(QIP)方式で代替施設を造る考えを検討していることも示唆した。

 稲嶺市長は「海はもとより、陸上にも新たな基地は造らせないとの信念を貫き通す」と強調。「(首相が)公約したことを実現できるよう英断をお願いしたい」と県外・国外移設を断念しないよう求めた。

 会談には稲嶺市長のほか、親川敬副市長など市幹部、玉城義和県議、市議11人が出席した。

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