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海外ソーシャルメディア事例を徹底的に調査し,マーケティング活用の秘訣を提案するブログ

Grouponというソーシャルコマースサイトをご存知だろうか?

サービス開始は2008年11月。まだ2年にも満たないこの若いベンチャーが信じられないパフォーマンスを上げている。(元記事はTehcCrunch: 共同購入でぼろ儲けGrouponの巨大資金調達の詳細


Groupon
【 サイトURL: http://www.groupon.com/


その驚きの数字を上げてみよう。Grouponはすでに黒字化し,2010年度の推定売上は3.5億ドル(315億円),月間推定利益は400万ドル(3.6億円)を超えているとTechCrunchは報じている。単純計算すると年間利益は5千万ドル(45億円)だ。創業1.5年のネットベンチャーとしては前例のないハイパフォーマンスと言ってよいだろう。

CrunchBaseのGroupon情報によると,彼らは米国シカゴに拠点を持ち,従業員数は320名に達したようだ。さらに信じられないのはその企業価値だろう。すでに4回,ベンチャーキャピタルから資金調達を行なっており,企業評価ではなんと13.5億ドル(1215億円)。直近ラウンドのリードベンチャーはまたもロシアのDigital Sky Technologies社(Facebookの主要株主)らしい。
 
 
■ Grouponはどんなサービスをしている会社なのか?

まず「groupon」とはグループとクーポンの合成語,つまりグループ購入の割引クーポンということ。この言葉の通り,彼らのビジネスモデルはいたってシンプルで,いわゆる共同購入だ。彼らは米国を中心とした主要都市(現在55都市,年内に100都市を目指している)においてこの共同購入の斡旋を行っている。

Groupon3
【対象都市,クリックで拡大されます】

各都市ごとに1日1品,Today's Deal(今日の取引) という実にシンプルな仕組みを提供している。対象はレストラン,観光ツアー,イベント,エステサロンなど多岐にわたるが,その特長は地域に根付いたリアル店舗を対象としている点だ。例えばニューヨークのRecent Deal(最近の取引)を見てみよう。期間は3月22日から5月4日まで40日間強で10取引なので,ニューヨークでは4日に1度,掘り出しモノが出品されるという感覚だ。

Groupon4

自分が関係する地域(複数登録可能)を指定してログインすると,Today's Dealがある場合は次の画面のようにズバッと表示される。例えば5月5日のToday's Dealはフラワーアレンジメント,100人以上集まると75ドルの商品が35ドル(53%値引き)で購入できる。達しなければ取引不成立となるが,直近取引を見てお分かりの通り,すべて1000人以上,多いものでは7000人以上を一日で集めており,取引が未完で終わる率はかなり低そうだ。

Groupon5

注目ポイントは,商品表示の上部にFacebook,Twitter,Eメールというアイコンがあり,ワンクリックで友人に知らせることができる点だ。共同購入成功の決め手はクチコミの促進にあり,まさにそのためのアイコンだ。

ちなみにGrouponの会員数は300万人,現在約40分野の商品を扱っている。そして創業以来1.5年間で300万件の取引が成立したとのことだ。


■ Groupon,成功の秘密

Groouponの仕組みはシンプルだが,驚くような急成長をとげている。この分野はソーシャルコマースないしソーシャルショッピングといわれる分野だが,今までは際立った成功事例がなかった。

例えばこの分野で競合となる Living Social,そして老舗サービスであるKaboodleとの比較をGoogle Trendsで見てみよう。

Groupon2_2

ユニークデイリー訪問者数で,老舗のKaboodleは15万人,競合のLiving Socialは20万人程度なのに対して,Grouonはすでに40万人近くなっている。しかも四半期ごとに倍々ゲームで成長していることが見てとれる。

また共同購入といえば,日本では2000年にサービスを開始しているネットプライスのギャザリングがトップブランドだが,残念ながら最近は業績の頭打ちが続いている。

Netprice
【ネットプライス,売上高と営業利益推移】

ではなぜ,Grouponが信じられないような成長性と収益性を実現しているのか。日米環境の違いもあるが,特にネットプライスのギャザリングと比較すると,その特長が浮かび上がってくる。

以下,成功要因と思われる点をまとめてみよう。
 
1.リアル店舗の商材を扱っていること

ネットプライスがネットショップ商材を中心としているのに対して,Grouponはリアル商材,それも地域に根づいた商品サービスにこだわっている。ネット商品は常に価格競争にさらされて利益率が低い上に,ITリテラシーの高いショップは自らがさまざまな集客手段(SEO/SEM/ソーシャルメディア等)を駆使できるため,あえて共同購入で単価を下げるインセンティブが少ないからだ。

それに対して中規模以下のリアル店舗は集客手段が限られており,その多くはクチコミに頼らざるを得ないのが現状だ。そのため赤字覚悟の目玉商品で集客するという手段にもなじんでおり,一時的な赤字が発生したとしても広告コストとして割り切りやすい。

ユーザーからしても,リアル店舗の質の高い商品サービスを40-90%で購入できる機会はなかなかないため,それが訪問のインセンティブとなっているのだ。

2.徹底的にシンプルなサービスにしていること

サイトを訪問してわかる通り,Grouponはあっけないほどシンプルなサービスだ。地域を指定して,「今日の商品」があるかどうか見て,後は購入する場合はクリックするだけ。このシンプルさはネットプライスにはないものだ。ショッピングそれ自体を楽しむユーザーにとってはドンキホーテ的てんこ盛りサービスもありだろうが,ネットプライスでは一週間というサイクルのため,即購入のドキドキ感が薄いのではないだろうか。(ただしネットプライスには毎日商品が入れ替わり24時間限定で販売を行う「24バリュー」というサービスもある)

今,多くの生活者は情報大爆発に苦しんでおり,自らにとって価値の高い情報のみをフィルタリングしてくれるサービスが受けている。Grouponの勝因にシンプルさがあるのは間違いないだろう。

裏返すと商品をそれだけ厳選している証拠だろう。ユーザーがドキドキするような商材に限定し,それを破格値で提供する。一日で買うチャンスはなくなるので毎日訪問する。この信頼感がリピートユーザーを生んでいる。

3.ソーシャルメディアを最大限に活用していること

リアル店舗からすると「先着10名限り」の目玉商品に似ているが,実は本質的なところが違う。目玉商品は人に推薦すると損をするが,Grouponは(最低購入単位があるので)人に推薦することで自らが得する点だ。そのため商品を購入したい利用者にとって,ソーシャルメディアでクチコミするインセンティブが生まれ,それが毎日の巨大なバイラルとなる。

以前,ブログ記事( Twitterで一番得しているのはDellではない ~ 個人売買サイトとTwitterの蜜月関係 )でも書いたが,ソーシャルメディアは企業の自己発信よりも,利用者自らが情報発信する方がはるかに強力な活用法だ。

成功事例としては,EbeyやEtsyなどの個人売買サイトがある。またプロモーション系で言うとペプシの"Pepsi Refresh Project"(ペプシ,スーパーボールCM撤退の背景とソーシャルメディア・キャンペーンの全貌) がコンテストをたくみに活用することで,その原理を最大限に利用している。

Grouponはツイッターアカウントを都市ごとに持っているが,最大のものでも本社があるシカゴアカウント(GrouponChicago)でフォロワーは1万人だ。よくフォロワー数を伸ばさないとツイッターのパワーは活かせないのではとの声が聞かれるが,要は使い方次第ということだ。
 
ちなみに,Grouponではさらに面白い仕組み,Groupon Reward Pointを導入する予定だ。これは最低購入単位に達する以前に購入を申し込んだユーザーに対してポイントを提供するもの。1ポイントは1セントとなり,購買時に値引きとなる。これにより初期に申し込む利用者がさらに増え,彼らがリピートユーザーとなるわけだ。消費者心理をたくみにつく心憎いインセンティブだ。



さて,今回はGrouponを取り上げたが,最近ソーシャルコマースが最重要トレンドとして注目されつつある。

Ron ConwayがSV Angelに$20Mを投資–これから伸びる「三大メガトレンド」を語る (TechCrunch, 4/23)

Conway氏は伝説的なエンジェル投資家だ。その彼がプッシュしている“三大メガトレンド”は「リアルタイムデータ」 「ソーシャルWeb」 そして「フラッシュマーケティング(ソーシャルコマース)」であり,いずれも ”ビリオンダラー(billion dollar, 数十億ドル規模)の業態” とのべている。

手前味噌で恐縮だが,当社ループスでは,2006年よりソーシャルコマース案件を手がけ,書籍(Webコミュニティで一番大切なこと)内でもソーシャルコマースについて解説している。ここにきてようやくメガトレンドとなってきたこの成長分野につき,今後はフォーカスしてブログ記事化していきたい。



「Webコミュニティでいちばん大切なこと」 (インプレスジャパン)
「第五章 ECと集合知の融合 ~ ソーシャルコマースの潮流」を共著しています。 
 
  
 
【ソーシャルメディア事例】
マーサ・スチュワートに学ぶトリプルメディア活用最前線 (5/2) 
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【in the looop はてぶトップ3記事】

1位 Google Readerであらゆるページを購読可能に ~ 自動RSSフィード生成機能 (1/26) 
2位 個人が印税35%の電子書籍を出版できる時代 - Amazon Kindleの衝撃 (12/30) 
3位 mixi,モバゲー,iPhone 徹底比較 「どのアプリが一番儲かるか?」 (12/1) 



斉藤Twitter。ご連絡などお気軽にどうぞ。 http://twitter.com/toru_saito
ループス社Twitterアカウントはこちらです。 http://twitter.com/LooopsCom
最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』

Toru Saito
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ソーシャル・リアルタイム・モバイルのエキスパートとして,最新選りすぐり情報をブログとツイッターで配信しています

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