2010年5月8日0時7分
ギリシャの金融危機でEUの基盤が揺らぐ一方、米国は企業収益が顕著に回復している。中国、インドなどアジア新興国の経済は一段と活性化し、世界経済のバランスの変化は加速している。しかし、日本は依然停滞感が強く、巨大な変化の蚊帳の外になりつつある。
それはバブル崩壊後の失われた10年に始まった傾向だが、リーマン・ショック後特に明確になってきた。
その理由の第1は日本が得意としていた輸出による繁栄というビジネスモデルが崩れ、グローバルで柔軟性がある大量生産体制を築いた中国や韓国の新しい行き方に劣後したことにある。第2はそれによる企業体力の低下に加えて、デフレスパイラルが進み、有効な対策がないままに、国全体が積極的にリスクを取らない、あるいはその余裕がない状況になったことである。
企業の研究開発投資は萎縮(いしゅく)し、また非正規社員の比重を増やしたことが、「技術の伝承」を危うくしている。有効な政策対応が遅れたのは、日本の国際競争力に対する過信と、民間企業の活動には関与しないという米国流の発想からだったと思われる。
しかし、米国も新興国も世界の構造変化の中で新しい市場を確保するという国益のために、国を挙げて戦略を展開している。その流れの中で日本はアブダビ、ベトナムで相次いで原子力発電プラントの受注に敗退した。また、白物家電では中国、韓国勢が日本のメーカーと同等の商品を2割安い価格で日本市場に本格参入すると伝えられている。企業体力で劣勢に立つ日本勢はどう立ち向かうのだろうか。過信のつけが来ている今、政治と産業の対話が滞っているような状態は、思い切った転換が必要である。(瞬)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。