開幕直後なのに、いまいち客足が伸びない上海万博。5日の入場者数は8万5600人で、初めて10万人を割り込んだ。主催者側は会期中、万博史上最多の7000万人の入場者を見込んでいるが、このペースだと3000万人程度になりそう。それでも、日本館やサウジアラビア館などの人気パビリオンは連日2−3時間待ちの行列。そこで実際に中国人に混じって並んでみると、追い越しや柵越え、将棋倒しの危機など、壮絶な異文化が体験できた。
不入りの原因は明らかだ。上海在住の日本人駐在員は「入場料が高すぎる。160元(約2200円)は、上海人にとって2万円ぐらいの感覚」と指摘する。
もっとも、主催者側は「来場者が殺到する」と考えていたようで、各パビリオンには行列を仕切る鉄柵が100メートル以上にわたって設置された。だが、多くのパビリオンが待ち時間なしで入れるため、来場者は迷路のような柵に沿ってパビリオンの周囲を何度も往復するハメに。
そんななか、面倒になって柵をヒョイヒョイと乗り越えたり、継ぎ目を外して近道を構築するヤカラが出現。監視係のボランティアが注意すると、「何が悪いんだ!!」と逆ギレするオヤジも。
人が少ないメリットもある。懸念されたトイレは十分に余裕があり、清潔。ただ、男子トイレは大便区と小便区に分かれているのだが、小便区の半分は便器がなく、水の流れる金属の壁に向かって用を足すタイプ。隣の人の局部が丸見えになっても平気なのは、やはり中国らしい。
日本館は連日2−3時間待ちの行列。周囲はアスファルトで気温は30度を超える。中国では女性だけでなく、男性も日傘を差す。周囲への配慮は一切ないのでコツ、コツと傘の骨が顔や頭に当たって不愉快極まりない。
行列の先には冷たい水を5元(約70円)で売る売り子がいる。市内では2元(約30円)で買えるので、かなりフッかけている。一方で、行列慣れしている中国人は自分で食料を持参。足下にはリンゴやナシの食べかすが転がり、ゆでタマゴの殻まで散乱していた。
列は1人1人の間隔が狭い…というか、ない。ピタッと体と体をくっつけるのが中国流。それもグイグイと後ろから圧力をかける。しかも、さっき後ろで見かけた顔が、気付いたら10メートル以上も先に。気付かぬうちに追い抜かれたのだ。
後ろの女性は連れている子供に日本の蔑称「小日本が、小日本が…」と熱く語っていた。口では「小日本」と言いつつも、3時間も並んで日本の展示が見たいというのが本心らしい。
パビリオンの行列は1列か2列が原則だが、日本館は入り口付近で行列が広がるスペースがある。ここが一番危険で、後ろから一気に圧力がかかり、パチンコ台に玉が入るように「われも、われも」と一点に人の圧力が集中するのだ。
「押すなー、押すなー」と悲鳴が上がり、超満員の通勤電車のような状態が30分以上も続く。ほうほうの体で館内に入ったが、1日分の体力を使い切った気分だ。
館内でも、あきれた光景が。「撮影禁止」とあるのに、みんなが林家ぺー、パー子夫妻のようにフラッシュをたきまくっているのだ。だが、日本の技術力の展示には、さすがの中国人も感心しきりで、ようやく留飲を下げることができた。