市民が検察の不起訴処分に強くノーを突きつけた。
民主党の小沢一郎幹事長が代表を務める資金管理団体「陸山会」をめぐる事件で、東京第5検察審査会が「起訴相当」を議決した。小沢氏を容疑不十分で不起訴処分にした東京地検の判断をひっくり返したのだ。
小沢氏は検察の処分について「1年間の強制捜査で潔白を証明してもらったと思っている」と主張してきた。だが、検察と全く同じ証拠を基に、審査会は「起訴すべきだ」と議決した。しかも議決は、小沢氏の供述を「信用できない」とまで指摘する。そもそも検察の処分は「容疑は不十分」というもので、潔白の証しとの主張は強引である。小沢氏は議決を重く受け止めるべきだ。
無作為で選ばれた審査員11人が、検察官の不起訴処分の妥当性を判断する制度である。今回は全員一致で「起訴相当」を議決した。
事件では、石川知裕衆院議員ら元秘書3人が、土地購入の際に小沢氏から4億円を借りながら、返済分も含め政治資金収支報告書に記載しなかったとして起訴された。議決は、虚偽記載について「絶大な指揮命令権限を有する」小沢氏の共謀が成立するとの認定が可能だと述べる。
その最大の根拠は、石川被告と元私設秘書の池田光智被告が、報告書の提出前に、それぞれ小沢氏に報告や相談、説明や了承を得ていると供述したことを挙げる。
検察はこの供述だけでは具体性を欠き、共謀を裏付ける物証もないと結論づけた。裁判で確実に有罪を得るため、いわば「高いハードル」を自らに課したのである。
これに対し、議決は「秘書に任せていた」と言えば、政治家の責任は問われなくていいのかと批判し、「政治とカネ」で政治不信が高まる中、市民目線からは許し難いと主張する。事実を解明し、責任の所在を明らかにすべき場所は、法廷だというのである。率直な問題提起だろう。
一義的には地検の処分へのノーである。地検は、議決の趣旨を踏まえ最大限再捜査を尽くし、処分を検討すべきだ。仮に再び不起訴になっても、審査会がもう一度「起訴相当」を議決すれば、小沢氏は「強制起訴」される。その意味からも重い議決だ。
この議決は、鳩山政権にとっても大打撃だ。そもそも鳩山由紀夫首相本人の偽装献金事件と小沢氏の事件について、国会で説明をせずけじめをつけなかったのがつまずきの出発点ではなかったか。普天間問題もあり、結果的に鳩山内閣の支持率は危険水域にまで下がった。小沢氏は事件について国会で説明すべきである。再捜査を理由に説明しなければさらに傷は深まる。
毎日新聞 2010年4月28日 東京朝刊