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社説:牛丼と弁当 値下げの余波が心配だ

 消費者の節約志向に合わせる形で値下げ競争が続いている。流通大手の10年2月期の決算は、イオンが連結決算を発表して以来初の減収となったほか、他の大手スーパーも軒並み大幅減収となった。

 コンビニエンスストアも、大手5社とも営業減益だ。ローソンの新浪剛史社長は「コンビニは高いというイメージがあり、他業態に客を奪われた」と話している。

 景気は回復基調が続いており、節約疲れという声も聞かれる。しかし、消費者を引き付けるためには、安さを印象付けることがやはり要のようだ。その典型が牛丼の値下げ競争だろう。

 大手の牛丼チェーン「吉野家」の10年2月期決算は、連結最終損益が89億円の赤字となった。牛海綿状脳症(BSE)問題で牛丼の販売を休止した05年2月期の7億円の赤字を大幅に上回る。

 ステーキなどの子会社の不振も響いたが、ライバルの「松屋」や「すき家」が牛丼の通常価格を引き下げ、吉野家の値ごろ感が薄れてしまい、牛丼関連の利益が大幅に減ったことが影響した。

 巻き返しの意味もあるのだろう。吉野家は今月に入って期間限定での値下げに踏み切った。しかし、すぐに対抗措置がとられ、「松屋」は並盛りの場合、吉野家の270円よりさらに低い250円に設定した。

 また、「すき家」も都市部にある一部店舗で値下げを実施し、並盛りを250円に下げた。吉野家の期間限定値引きは13日で終わったが、松屋は23日、すき家は21日まで続く。

 こうした値下げ競争は他の外食チェーンにも波及するだろう。低価格の弁当が売り上げを伸ばし、ランチも、ワンコインで足りる500円以下ですませるケースが増えている。

 所得が減り、雇用が影を落とす中で、外食や弁当の値下げを歓迎する人も多いだろう。

 外食や弁当の値段が下がったからといって、それによって減る支出が他に回るなら、単純にデフレを加速するということにはならないのかもしれない。

 ただ、値下げした分は、誰かがそれを負担しなければならない。心配なのは、品質の低下につながったり、残業費の未払いなど不当な雇用条件を押し付けられたりしないかだ。

 景気は最悪期を脱し、回復の途上にあるとはいえ、原油など資源価格の上昇によるコスト圧力が高まる中で値下げ競争が続いている。そのしわ寄せの行方が気がかりだ。

 値下げだけではなく、消費者が財布のひもをゆるめるような、サービスや品質での競争にも力を注いでもらいたい。

毎日新聞 2010年4月16日 東京朝刊

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