報道陣向けに公開された「梅田阪急ビル オフィスタワー」。オフィスタワーへのエレベーター乗り換え階の15階は一般にも開放され、木製のロングベンチで休憩したり、窓から市内を一望したりできる |
大阪の一等地、梅田地区で大型のオフィスビル建設が活発化している。数年前に計画されたビルが今年以降、相次ぎ完成時期を迎えるためで、今年の梅田の新規供給面積は前年の3倍に達する。ただ、景気低迷や事務所縮小で既存ビルの空室も目立ち、オフィス需要は低迷したまま。大量供給がオフィス賃料の値崩れを加速する恐れも出ている。
阪急電鉄は4月30日、阪急百貨店うめだ本店が入る「梅田阪急ビル オフィスタワー」の内覧会を開いた。角和夫社長が「フラッグシップ(旗艦施設)」と自負する一大ビルで賃貸面積は7万平方メートル。だが、全体の入居率は約3割にとどまる。全方位ガラス張りの41階の最上階は市内を一望でき、企業にとってはブランドイメージ向上にもなるが、開業を前にテナントは決まっていない。
阪急では、立地のよさや1フロアの広さを売りに、上場企業を中心に誘致を進める。3年をめどに満室を目指す。
不動産仲介の三鬼商事によると、2010年の梅田地区の新規供給面積は11万4千坪(1坪=3.3平方メートル)。09年の3倍以上に増える。一方で09年の新築の平均賃料は坪単価1万7千円で、10年前より2割以上、下落した。関係者によると、梅田の賃料は景気が回復基調だった06年は坪単価4万円でも契約が取れたが、今やその半額でも埋まりにくい。
背景には、企業が立地のよさやステータスより経費削減を優先していることがある。賃料は割安だが移転費などが重荷となり現状にとどまる例も多い。梅田地区の09年の新築ビルの平均空室率は34.05%と異常な高さだ。
だが、今年以降も大型ビルの供給は相次ぐ。来年春にはJR西日本が大阪駅直結の新ビル(オフィス賃貸面積約2万平方メートル)を開業、駅北側の梅田・北ヤード(同約15万平方メートル)も13年春に完成する。自ら営業攻勢をかけるJR西の佐々木隆之社長は「完成までに埋まるかどうか」と弱気の一面も。テナント誘致競争の激化でさらなる賃料下落も予想される。(佐藤亜季)