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黒澤記念館新設断念へ

(上)改装して黒澤記念館にする提案が示されたサテライトスタジオ  (下)雑草が生い茂る伊万里市黒川町の黒澤記念館建設予定地
(上)改装して黒澤記念館にする提案が示されたサテライトスタジオ  (下)雑草が生い茂る伊万里市黒川町の黒澤記念館建設予定地

 伊万里市で約12年間くすぶり続けてきた「黒澤明記念館」建設計画が、大きな転換点を迎えた。黒澤プロダクションが、中心商店街にあるサテライトスタジオを改装して記念館とする案を市へ伝えた。同市黒川町に予定していた記念館の事実上の断念。7日、市民からは「もともと無理な計画だった」など、冷めた意見が多く聞かれた。

 記念館建設計画は1998年、黒澤明監督の死後、監督の長男・久雄氏が社長を務める黒澤プロと市が合意。市は同プロから1億500万円で記念館を設立する権利を購入した。翌年、久雄氏を理事長に事業主体となる黒澤明文化振興財団が設立され、建設に充てる寄付金を集めたが、その大半は使い果たしていた。

 それでも、黒澤理事長は今年2月、伊万里市を訪れた際には建設継続を強調。そして今度は一転、黒川町での建設をやめ、サテライトスタジオを記念館とする提案を行った。

 建設予定地の福田地区の区長、松尾紘さん(65)は「地区の発展につながると期待していたので残念。規模を縮小してでも建設されることを期待していた」。寄付金については、「計画通りに建設されないのであれば、寄付した企業や個人に清算すべきだと思うが、無い袖は振れないのではないか」と話した。

 サテライトスタジオがある伊万里本町名店街での反応もいまひとつ。同名店街協同組合の池永晃一理事長(66)は「市街地から離れた場所につくることに無理があると感じていた。サテライトが空き施設になるよりは記念館ができた方が良いが、黒澤さんがどのくらい本気で取り組んでくれるか分からず、期待ばかりとはいかない」と、半信半疑の様子だった。

 財団には現在、理事は2人しかおらず、理事会が開けない状態が続いており、市へも記念館の具体的な計画を示していない。

 今回の建設断念提案が権利金1億500万円の返還につながるのか、財団が建設費として集めた寄付金はどうなるのか――など不透明さはぬぐえていない。

2010年5月8日  読売新聞)
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