2010年4月20日 12時12分 更新:4月20日 15時1分
農林水産省と宮崎県は20日、同県都農町の肉用和牛繁殖農家で母牛3頭が家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」に感染した疑いが強いと発表した。農水省と同県は同日、防疫対策本部を設置。同町と日向市など周辺自治体に牛・豚の移動自粛を依頼した。一両日中にも3週間の移動・搬出制限区域を設定する。国内の口蹄疫の発生は00年に宮崎市と北海道で確認されて以来、10年ぶり。農水省などによると、韓国、中国などで今年1月以降、口蹄疫に感染した牛が確認されている。同省は牛肉の輸出を自主的に一時停止する。
宮崎県によると、今月9日、獣医師から宮崎家畜保健衛生所に口の中に軽いかいようがある牛がいるとの連絡があった。同衛生所の家畜防疫員が立ち入り検査を実施したが、症状がある牛が1頭だったため経過観察とした。
しかし、16日夕方になり同じ症状の牛がいるとの連絡があったため17日、再度立ち入り検査を実施した。口の中をぬぐった液を動物衛生研究所(東京)で検査した結果、20日、遺伝子検査で陽性だったと連絡が入った。現在、ウイルス分離検査による確定診断を進めている。
繁殖農家では母牛9頭と子牛を産んだことのない若いメス3頭、子牛4頭の計16頭を飼育している。既に牛の移動を自粛しており、全頭を殺処分する。近くの農家で今のところ感染の疑いのある牛は確認されていない。
都農町の3頭について感染の疑いが強いため、農水省と県は一両日中にも、家畜伝染病予防法に基づき3週間、牛の移動を禁止する移動制限区域を発生地から原則として半径10キロ(5~30キロで設定可)、搬出制限区域同20キロ(10~50キロ)を設定する方針。範囲内では家畜市場も閉鎖され、牛の取引はできなくなる。宮崎市で感染が確認された00年には、移動制限区域半径20キロ、搬出制限区域同50キロを設定した。
宮崎県で口蹄疫にかかったとみられる牛が確認されたことを受け、農林水産省は20日、赤松広隆農相を本部長とする口蹄疫防疫対策本部を設置した。赤松農相は閣議後会見で「これ以上広がることのないように万全の措置をとりたい。(感染が疑われる牛は)出荷していない、安全だ」と述べた。専門家による委員会を20日に開催し、感染源、感染経路の究明を図る。【佐藤浩】
牛や豚、羊などが感染するウイルス性の家畜伝染病。感染力が極めて強く、40~41度の高熱を伴い、食欲不振、多量のよだれ、口、ひづめの間、乳頭などに水ほうやびらんができ、足をひきずる症状が表れる。しかし、人に感染することはなく、感染した牛などの肉を食べても人体に影響はない。