米クライスラー・グループLLCは、ほとんどの車について最大5年のゼロ金利ローンを開始した。ショールームを訪れる客の数を増やし、レンタカー会社など大口の顧客ではなく、個人顧客への販売を増やすのが目的だ。
米自動車業界ではここ1、2カ月販売促進策の競争が激化しており、今回のクライスラーはその最新の例となる。3月に先鞭(せんべん)をつけたのはトヨタ自動車だった。同社は3日、ゼロ金利ローンやリース料金の補助、一部車種についての3カ月目のメンテナンスの無料化という販促措置を延長すると発表した。
意図しない加速の問題で世界中で800万台以上の車をリコールした影響と闘っているトヨタは、高級ブランド「レクサス」の低コストでのリースを5月の販促策に付け加えた。エドマンズ・ドット・コムによると、トヨタの4月の販促支出は1台当たり2498ドル(23万7000円)で、1年前に比べて53%増加した。4月のトヨタの販売台数は24%増加した。
クライスラーの最大の販促措置は2010年型「ジープ・グランド・チェロキー」とスポーツ用多目的車(SUV)「コマンダー」向けで、ゼロ金利ローンか4000ドルのキャッシュバックとなる。同ジープは今後数カ月で新デザインの車に取って代わられ、コマンダーは生産打ち切りとなる。同社の販促支出は3370ドルで、1年前の水準を23%下回っているが、他のメーカーに比べると依然高い。
同社が3日発表した4月の米国内乗用車・小型トラック販売台数は25%増の9万5703台で、2009年3月以来の高水準だった。ただ、販売状況に詳しいディーラーによると、全体の販売は大口顧客への大量の販売によって支えられた。こうした大口顧客への販売は通常、個人顧客への販売に比べて利益が薄く、長期的には価格に打撃を与えることもある。これはレンタカーは使用年数の浅い中古車として新車より低い価格で再び市場に戻ってくるからだ。
オートデータによると、4月の米国での自動車販売は総計で20%増加し、年換算で1120万台となった。1年前の923万台を超えたが、3月の1178万台を下回り、販売の勢いが鈍っているとの懸念が出ている。
クライスラーとトヨタの新しい販促策は、大方のメーカーの販促支出が前年水準を下回っているという環境の中で出てきた。エドマンズ・ドット・コムによれば、大手メーカーの中で支出を増やしているのはトヨタとホンダだけだ。業界全体の4月の支出は1台2654ドルで、1年前から13%減少した。
フォード・モーターとゼネラル・モーターズ(GM)もキャッシュバックなどの措置を打ち出しているが、額は1年前より低い。
ホンダの4月の支出は1787ドルの過去最高を記録した。同社はシビックとアコードについて、期間5年、金利1.9%のローンを続けている。