改正刑訴法は28日午前0時に時効成立が迫っていた岡山県倉敷市の殺人・現住建造物等放火容疑事件にも適用された。事件は95年4月28日未明、無職、角南(すなみ)春彦さん(当時70歳)方で発生。住宅など4棟を全焼し、焼け跡から角南さんと妻翠さん(同66歳)が刺殺体で見つかった。2人の頭部は切断されていた。
県警児島署捜査本部は恨みによる犯行とみて捜査。情報230件が寄せられ、土地の境界線や金銭を巡るトラブルの相手も浮上したが、容疑を裏付ける証拠は得られなかった。
県警の石部秀行・捜査1課長は時効廃止を受け、「今後とも捜査に全力を傾注し、必ず検挙したい」とコメントした。また、この事件を捜査した県警幹部は「時効完成なら遺族に連絡することになっており、顔向けできないと思っていた」と明かした。一方、別の県警幹部は「書類や証拠の管理場所を確保しないと、『捜査継続』はかけ声だけになる」と懸念も示した。
角南さんの親族で近くに住む無職、角南順造さん(79)は「時効は15年と知っていた。命日が来る度、『あと何年、あと何年』と数えた。1年を切って以降はあきらめに近い思いだった」と15年間を振り返り、時効廃止について「喜ばしい。警察は継続して捜査してくれる。一日も早く犯人を捕まえてほしい」と願いを込めた。【石戸諭、石井尚】
毎日新聞 2010年4月27日 22時26分