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府立成人病センター移転 まちづくり計画本格化

2010年5月4日

 大阪府の大プロジェクトとなる府立成人病センター(大阪市東成区)の移転に伴う、森之宮地区と大手前地区(同市中央区)のまちづくり計画の動きが本格化する。特にこれまで府が「健康ゾーン」と位置づけた森之宮地区から府庁に隣接する大手前地区に同センターが移転。跡地利用で、新たなまちづくりの“核”を具体的に打ち出せるかが、大きな課題として浮上する。

大手前地区に移転する成人病センター。「地域医療」の観点で効果的な跡地利用が望まれている

 がん診療・治療で全国トップクラスの実績があり、がん診療連携拠点病院の指定を受ける成人病センター。築後32〜43年経過し、施設の老朽化などを理由に新築移転する。

 府立病院機構が公表した新しい成人病センター整備基本構想によると、建物は地下2階、地上13階建ての構成。敷地面積は約1万2千平方メートル、延べ床面積は現在よりも約8千平方メートル増床の約6万5千平方メートル(研究所部分含む)。ベッド数は500床で個室を増加するほか、外来、診療部門も拡充。建設費は約340億円を見込み、整備手法は民間資金などを活用する民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式が検討されている。

 2011年度末に民間事業者と契約を交わし、12年度に工事着手。15年に開院する計画だ。

 府は1992年に森之宮地区を「健康ゾーン」として周辺整備を進め、成人病センターの周囲には府立健康科学センターや医療関係の専門学校、診療所、薬局などが立地しているが、成人病センター移転により「地域の特性」が薄れ、周辺の経済に与える影響も懸念されている。

 成人病センターの跡地利用は、経済界、行政、医療関係者らで構成する「大手前・森之宮まちづくり検討会」で議論が重ねられている。

 同検討会が提示したまちづくり構想のたたき台では、健康科学センターや森之宮クリニックなど既存施設と連携した「健康と地域医療」を基本に多分野の診療所が集まる「医療モール」、医療介護付のマンションやスポーツジムなどの健康関連企業の誘致、高齢者支援施設の整備−などが挙げられているが、実現可能性は未知数だ。

 府は、年内に成人病センター跡地の活用で具体案をまとめるため、庁内に部局横断のプロジェクトチーム(PT)を4月28日に発足。橋下徹知事は「僕にとって唯一の“前向きな話”。何とか成功させたい。庁舎問題と成人病センター移転は任期中に道筋を付けたい」と述べ、議会や地域には成人病センター移転に反対の声はあるが「一部の声に左右されることなく880万府民全体を考えて前に進めて」と職員に求めた。

 府は、5月末をめどに本年度1回目の検討会を開く考え。同PT統括の岩田教之総務部理事は「時間も限られ大変な難題だが、実現可能で大胆なまちづくりの“核”になるものを出していく」と話している。