私が初めて犯された日。 
そして、たくさんの赤ちゃんを産み落とした日。 
あれから順調に赤ちゃんは育っている。 
何度かの変態を経て、その姿は大きく変わってしまったけれど 
どんな見た目でも、私の赤ちゃんには違いない。 
 
ドクン……ドクン……。 
(ほら……赤ちゃんの音が、聞こえる……) 
 
ドクン……ドクン……。 
(今日、も…いい子に……してる、ね……) 
 
規則正しいリズムが、お腹の中から聞こえていた。 
聞こえるというのは少し違うかもしれない。 
全身で感じ取る振動。 
私の胎内や骨を通して伝わってくる、愛しい音。 
 
周りを見回せば、ピンク色に覆い尽くされている。 
何か大きな動物の胃袋に飲み込まれてしまったみたいだ。 
私は大量のぬるま湯を吸ったスポンジのような感触の床に、躰を横たえている。 
濃硫酸のようだと感じた液体は、もう私を傷つけない。 
ひょっとしたら、あまりにも長くこの空間にいたせいで、耐性が出来たのかもしれない。 
 
ここに連れて来られた時 
鏡を通して、妖魔空間に連れて来られたのだと思っていた。 
だけど今は鏡の中なのか、まったく別の世界なのか…… 
それすら分からなくなっている。 
 
この中にいると、喉も渇かなければ、お腹も減らない。 
暑くもないし、寒くもない。 
退屈ではあるけど、不自由はまったくない。 
眠っているのか起きているのか、自分でも分からない世界。 
(ここはきっと、私の苗床なんだ……) 
住みやすく、生きるのに苦労しないこの空間は 
きっと私の赤ちゃんが成長しやすいように、造られたもの。 
私のためのものじゃない。 
 
(今頃みんな、心配してるよね……) 
家族や黒猫支店のみんな、それに学園の友達や先生 
他にもたくさんの人が、私の事を心配しているかもしれない。 
何人もの顔が、私の脳裏を過ぎる。 
戻れるものなら、戻りたい。 
(だけど……) 
 
このお腹の中には、育っている命がある。 
誰から見ても歓迎されない、望まれていない子達だ。 
(だけど、私の赤ちゃんなの……) 
誰もが醜い生物だと言っても、人間の形すら持ってなくても 
凌辱の果てに出来た子であっても……。 
(私だけを頼ってくる赤ちゃんを見捨てるなんて、出来ない) 
だから私は、ここで生き続けるしかない。 
 
「ぅっ……はぁ…はぁぁ……」 
お腹の内側で、赤ちゃんが私にぶつかってきた。 
「も、もう…お腹が、減った…の……?」 
お腹がジンジンと熱く、痛くなってくる。 
出して、出してと、中で赤ちゃんが暴れているせいだ。 
「待って、て…ね。い…今……ママ、が…出し、て……うっ、くぅっ!」 
内側から身を切り裂かれるような痛みに、下唇を噛んで堪えた。 
 
赤ちゃんはまるでカンガルーのように、私のお腹の中で暮らしている。 
そしてお腹が減ると、お腹から出てきておっぱいを飲む。 
お腹がいっぱいになると、また私のお腹の中に戻っていく。 
そのたびに私は何度も出産を繰り返す。 
骨盤が動き、子宮口が開き、赤ちゃんを産んだ。 
そして赤ちゃんがお腹に戻ると、開いていた子宮口や骨盤は元に戻るのだ。 
出産事態が苦しいものではあったけれど 
それだけではない不安が、私を苛む。 
 
(どんどん……お腹が、苦しく…なってくる、の……) 
おっぱいを飲んだ赤ちゃんは当然、成長する。 
成長した赤ちゃんがお腹の中に戻ってくるのは、少し辛い。 
始めは自力で動けたけれど、今の私は 
お腹が重過ぎて、自分の力で立ち上がる事さえ出来ない。 
手足を使ってこの肉床を這いずるだけで、精一杯だ。 
 
「はぁ、はぁっ、うっ、はぁ……あ、赤ちゃん…ま…待って」 
まだ私の躰は、用意が出来ていない。 
骨盤も子宮口も開いていないから、出産に耐えられない。 
それでもお腹の痛みにうながされて、アソコからは濁った羊水が流れ始めていた。 
(で、でも、ま…だぁ……ッ、くぅ……う、はぁ、た…りな、い) 
赤ちゃんがアソコからスムーズに出られるほど大量じゃない。 
「マ、ママ……くっ、ンッ!うっ、ふぅぅ…はぁ、く…苦し…ぃ……」 
 
メリッ……ミリミリッ、ミシッ……。 
「ひっ……!いっ、んぐぅうぅぅっ……待っ…て、ま…まだ……」 
呼吸をするのも苦しいけれど、息継ぎの合間を使って赤ちゃんに訴える。 
だけど赤ちゃんはまだまだ幼くて、私の言う事を聞いてくれない。 
ミシッ、ギチッ!グッ…ズッ……ミシミシッ! 
「うっ、あ゛ぁ゛っ!はっ…あっ……うぅぅっ!」 
(く…き、きて…るぅ……ぅ、はぁ、アァァ、はぁ…あ、赤ちゃん…がぁ) 
いつもは閉じている子宮口が、赤ちゃんのサイズに合わせて開いてくる。 
(お…お腹の、奥…から、あ…あ、あ…赤ちゃん、き…きちゃ、う、よぅ……) 
 
グッ…ズッ、ミシッ……ミシミシミリィッ! 
「ひっ、いっ、んぎぃっ……アアアァァァァッ!!!」 
 
 
 
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