2010年05月07日 12時49分 [ 筆者自身のこと ]
クラスメートの話と中国の現場から考える日本人的幸福
テレビ番組で僕の高2のときのクラスメートと、女性評論家の対談で出た「幸福論」がどうも頭にひっかかる。
「幸せのためにカネをもっと稼ぐ必要はあるか」という疑問に、中国リアルIT事情というタイトルだけに、中国とITの話を強引にこじつけつつ書く。
中国で文革世代以降の僕らと同じか、それより若い人々を見ると、モノの所有欲、カネへの執着心はすごい。自分よりカネがはっきり少ない人間は仲良くなれぬ、そんな雰囲気を持っている。そうでない人はすごく珍しく、珍しい故に輝いていて、すぐにその人を覚える。
中国では少なくとも「(新)三種の神器」があったころのようにバブル世代のように、モノを持つことがステータスアップに反映する。そのため無理してもワンランク上のケータイを持とうとしたり、使えもしないデジタル一眼レフを持って自分を上に上に見せようとする。ブランド服や鞄を買ってワンランク上に見せようとする日本人も昔は今よりもっといたわけで、バブル期までの日本人もある程度似たような経験をしたんじゃないかと。
そういう中国の陽にあたる部分が紹介され「中国は大きな市場だ」「イケイケムードだ」と日本などで報道される一方で、ネットにはまって社会復帰できない20代30代をかなり見てきた。彼らは高価なモノに執着せず、毎日1時間30円のネットカフェに通い、ひたすらオンラインゲームをやり、動画サイトを見て、チャットをしていた。オンラインゲームはしないが、ブログを書いて、チャットグループと会話して、反応があってそれで快楽を感じる中国人もゴマンといるし、知っている。
「『主要産業がネズミ講』という都市で親がネズミ講にはまり借金まみれになったので、ネットに情報を書き込んで状況を打開したい。騙された被害者と情報を共有したい。でも検索の仕方も掲示板での書き込みの仕方もわからない。どうしよう?」という、冗談のような質問を知り合いの30代中国人から相談を受けたことがある。その中国人もその事件さえなかったら幸せだった。中国のネット廃人も、彼らは彼らで最低限のジュース飲んで炒飯食べて、ゲームやって、それで幸福だ。
日本では、バブル崩壊して、ネットがその10年後くらいに普及して、カネがなくても幸せだと思うことが多くなった。「日本語が世界中で最も使われている」というブログをはじめ、各種人気ネットサービスで日本からの利用率は世界トップクラスだ。「コンテンツを見る」だけでなく、「テキストを配信して数百数千の人に読まれる」「書いた(ブログ)記事がアクセスランキングで上位に来る」それだけでも幸せと思う人も出てきた。
最近マラソンが人気だが、高価な専用靴を見せびらかす人はそういないように思う。高尾山の登山が人気になったが、高価な杖や靴を買うことがメインの人はそういないように思う。あくまでメインは走ることであり登ることであり、カネを使うことがメインではない。今の中国では「金持ち=ブランド服を纏う」のが当たり前の一方で、チャットソフトのQQのチャット仲間の間で、山登りやハイキングのオフ会がよく開催されている。
中国では、バブル期以前のモノの消費を善とした日本と、最近のモノの消費以外も楽しければOKという日本の、両方の価値観が混在している。
日本で幸福か否かに、よく「閉塞感」がキーワードになっている。「閉塞感」は「変化がなく、将来に良い変化が期待できず、将来がヤバイ」と僕は解釈している。いくら働いている企業に期待が持てなくても、マラソンが趣味で「次のマラソン大会で記録を更新しよう」「42.195km走れるようにしよう」と目標を持っている人の頭の中は閉塞感だらけではないのではないか。勝間さんは自身の経験を基に「ビジネスライフ上での変革のあってカネが増えること」だけを幸せと思っているように思う。
僕の知り合いで鉄道会社とか区役所とかで働いている人もいるけど、みな幸せそうに見えた。ちっとも不幸に見えなかった。どこかのポイントサイトの昨日のアンケートで「生まれ変わったらどこの国で生まれたいですか?」という質問で「また日本に生まれたい」が圧倒的だった。
中国だって、閉塞感というのはあって、「収入は年々増えるけれど、それ以上にインフレでやれやれ」とか、「いつまでたってもパクリばかりでオリジナリティあって魅力ある製品は全然でない」とか、中国限定だけど「ネットがどんどん使いづらくなってい」とか、「道路工事や地下鉄工事ばかりでいつも使える道路は狭くて大渋滞」とか中国では中国での悩みがいろいろあるわけで「隣の芝生は青い」だけなんじゃないかと。
当時クラスメートだった彼を思い出すに、はっきり覚えているのは、数学の時間に数学のK岡先生というおばちゃんの先生に対し、なんかのきっかけで授業中口論になったこと。そのとき先生から見て彼は不真面目だったのだろう、先生は彼に説教をはじめたところ
「なんで数学を勉強をしなければいけないんですか?」
と彼は堂々と言い放ち、教室中の視線が彼と先生の押し問答に集中した。で、しかも彼はおばちゃん先生を言い負かしてしまった。
微積分は必要ないかもしれないが、加減乗除は必要だろう。最低限、普通に暮らすだけのカネは幸せとリンクするが、貯蓄額を増やすだけのカネは幸せとリンクしない。
乱文失礼。
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