電子コミック「働きマン」が配信拒否になった理由--電子書籍時代の検閲
前々回ご紹介したボイジャー代表取締役社長の萩野正昭氏との意見交換の中から、DRMとセンサーシップ(検閲)に関する話を紹介する。
萩野:たとえばAppleはAppleの、AmazonはAmazonのDRMを持つわけですよね。そういった場合、彼らのルールに従い我々はコンテンツを出す、というスタンスになるでしょう。我々は、彼らの定めたDRMに対しどうこう言う立場ではないと思います。
留意すべきはDRMだけではありませんよ。彼らはもっと違うルールを持っています。それはセンサーシップ、“検閲”です。AppleのiTunes Storeでいえば、DRMを切り離す方向で進んでいますが(筆者注:当初iTunes Storeで販売される楽曲には、原則「FairPlay」と呼ぶDRMが付与されていたが、近年ではDRM無しの楽曲の割合が急増している)、センサーシップは変わらず残しています。
その点で我慢がならないのは、解釈に(日本との)差があることですよ。たとえば、日本では許されているコミック本での血が飛び散るシーンは、厳しいコミックコードが存在する米国ではNGですからね。iPhoneアプリの形で販売されている電子書籍は、こういった懸念がものの見事に的中しています。
海上:具体的には、どのようなことがありますか。
萩野:ボイジャーが関与した講談社のコミックをiPhoneアプリ化し、iTunes Storeに申請したところ、30%程度がリジェクトされましたから。全10巻で4巻目までOKなのに、5巻目以降が出せない、とか。暴力ではなく疫病の発生で血を描いている場面も、残虐シーンだと判定されてしまいましたよ。
「働きマン」(安野モヨコ作の女性編集者が主人公のコミック、もちろんエロ系にあらず)は、主人公が疲れを癒す目的でマッサージを受けているとき、伸びをしたところ誤って胸が露出したシーンが引っかかりました。OLが主人公のコミックで、入浴シーンがないものはないですからね。うっかり風呂にも浸かれない。腰湯もダメですね、胸が出ちゃうから。
海上:かといって自宅の風呂に水着で入るのもどうかと思いますしね。
萩野:話は変わりますが、Appleについて書かれたものもアウトです。大谷和利さんの「iPhoneをつくった会社」と「iPodをつくった男」、2つともリジェクトでした。その理由は、現社員、元社員であろうと、Appleの社員にかかわるもの、製品にかかわるものは一切ダメ、と。じゃあマイクロソフトはいいのか、という話なんだけど(笑)
(続く)
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2週間ほど体調を崩していたため、前回との間隔が開いてしまいました。すいません。実は、その間にもいろいろ進展がありました……。間もなく、なんらかのご報告ができると思います。
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