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傷みコミュニケーション

2010年5月7日0時23分

 左腕を骨折した。腕をつった三角巾(きん)が重傷に映るのか、多くの人から声をかけていただいた。ほとんどが普段話をしたことのない人である。意外なことで世間の温かさを知った。

 いたわりの言葉をかけられる人、荷物を持ってくださる店員、電車やバスの席を譲ってくださる若者。一方で、骨折の体験を話される人もいる。もちろん、単なる好奇心から話しかけられる人もいただろう。しかし、いずれの人も、私の三角巾がきっかけで、弱い状況の私をいたわる気持ちが生まれ、私に心を開いてくださった。包帯がコミュニケーションのツールとなり、会話が生まれた。

 消費者とのきずな作りに苦労している企業は多い。消費者がなかなか心を開いてくれない。企業から消費者への一般的なコミュニケーションでは、自社の業績を誇り、商品の優秀さや、ユーザーにとってのメリットをアピールする。しかし、不況で企業は苦しく、様々な課題を抱えている。商品の販売不振や、価格の下落が経営を圧迫し、賃金、雇用問題で苦しんでいる企業も少なくない。温室効果ガス削減25%目標による企業への負担は、さらに企業を追いつめている。

 一方、消費者も、企業が常に万全だとは思ってはいない。そのような状況のなかでは、苦しさや、傷みも含めた企業の全体像を消費者にさらけ出す正直なコミュニケーションがむしろ消費者の心を開かせるのではないだろうか。商品の優位性だけではなく、弱点も正直に伝える広告や、不況のなかの苦労を地道に訴える社員によるブログも有効だ。今後、企業のブランド活動には、消費者の前で企業がどこまで裸になれるかという視点が求められる。(深呼吸)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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