【ボクシング】負けても恥じることない、長谷川穂積の勇気。スポルティーバ5月 6日(木) 17時40分配信 / スポーツ - スポーツ総合そして長谷川が繰り出すスピーディーで切れ味鋭い左ストレートを、3階級制覇王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)が間一髪のタイミングではずす。 テクニックと戦術を存分に駆使し、互いにカウンターにカウンターを合わせようとする頭脳的な戦い――4月30日、日本武道館で行なわれたバンタム級世界チャンピオン同士の事実上の統一戦は、近年まれにみる高レベルの攻防だった。 長谷川の一瞬の隙をつきモンティエルが左フックからの連打で4回TKO勝ちを収めたが、この正味11分59秒の戦いの中には、ボクシングの醍醐味が凝縮されていた。 「全盛を迎えたふたりのチャンピオンが互いの持ち味を出し合った高度な技術戦、心理戦は見応え十分だった。もちろん勝者は賞賛されるべきだが、敗者もなんら恥じることはない。最高のボクサーと最高のボクサーが生み出した戦いは最高に美しかった」 インターネットサイト『MaxBoxing』のガブリエル・モントーヤ記者は、両者の戦いをそう絶賛している。 「自分のファイトマネーを削ってもいいのでモンティエルと戦いたい」 そう言って長谷川は、本田明彦プロモーターに対戦交渉を依頼した。 「5年間に10回防衛できたことには満足しているけれど、僕はもっともっと強くなりたい。そのためには世界的に名の知られた強豪と戦うことが必要」という長谷川の希望で実現したチャンピオン対決だった。 日本のエース敗退は残念なことだが、その結果よりも私たちが記憶として頭に刻まなければならないことがある。敢えて高いリスクを負って対抗団体のチャンピオンを対戦者に指名した長谷川と、その陣営の意気込み、そして勇気である。 日本のボクシング界は、これまでリスクの低い相手を選んで防衛を重ねる傾向が強かった。それが、海外の選手や関係者から「井の中の蛙」と揶揄されてきた主因でもあった。 「俺たちは世界のどこでも戦うけれど、日本の選手は自国を出ようとしない。それでも世界チャンピオンといえるのか?」 5月8日に名城信男の持つWBA世界スーパーフライ級タイトルに挑むウーゴ・カサレス(メキシコ)の指摘は、的を射ているといえよう。私たちは、その言葉に真摯に耳を傾ける必要がある。 一方で昨年、敵地メキシコに乗り込んで逆転KO防衛を果たした西岡、そして今回の長谷川のように、理想を求める動きも出ている。今回の試合結果だけを捉えて萎縮していては、日本のボクシングそのものの前進は望めない。これからは日本人ボクサー、関係者の勇気が試されることになるだろう。 「駆け引きとか頭を使いながら戦うことができたので、試合をやっていて楽しかった。あれも実力。言い訳できない。できることなら(モンティエルと)もう1回やりたい」 敗れてなお、悔しさのなかでも長谷川は前を向いていた。彼の性格や思考傾向からみてバンタム級での再起は間違いないところ。メキシコあるいはラスベガスでモンティエルと再戦という線も考えられる。前チャンピオンの今後に注目したい。 原 功●text by Hara Isao 【関連記事】 ・ ジネディーヌ・ジダン「W杯、それは私の人生のすべてだった」 ・ 本田圭佑「底知れぬフラストレーション」 ・ MVP候補とW杯 ウェイン・ルーニー「C・ロナウドへの借りは南アで返す」 ・ 日本代表関係者の証言から検証する 中田英寿がいた10年 ・ 息子と母を救うために上り詰めた世界王者の今
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