5月2日放送のデキビジで、2chの元管理人の西村博之さんと対談しました
デキビジは既存のテレビの予定調和的な対談に対するアンチテーゼとして位置付けているので、あの対談に違和感を覚えた人も多いでしょう。
私の反省としては、限られた時間の中で何とか与えられたテーマを消化しようとしすぎて、西村さんに私の価値観を押し付けていると取られかねない表現がたくさん見受けられたところです。大変失礼しました。
とはいえ、西村さんから、「2chはmixiやgreeよりもよっぽどIPの開示に応じている」という発言を、多くの方が視聴するメディアの中で得られたことは大変意義深いものだったと思います。つまり、ネットで完全な匿名はないということを改めて、確認できました。
私はあくまで議論のたたき台として「ネットの匿名性を規制すべきでは?」という自説を述べたつもりですが、西村さんの「現状でも2chはmixiや greeよりもよっぽどIPアドレスの開示に応じている」という発言の意図を今一つ汲み取ることができず、そのあと議論が迷走してしまった感があります。
一般に2chなどは「インターネット上の匿名掲示板」と言われていますが、実際には書き込んだ人のIPアドレスは残っており、発信元のプロバイダーの協力が得られれば個人は容易に特定できます。つまり、西村さんの主張は「現時点でも匿名性はないので、わざわざ実名にする必要がない。」という意図だったのです。実は、この発言こそ今回の対談の一番のポイントになるところであり、西村さんにもっと語ってもらうべき部分でした。
当初、私はその点は理解した上で、例えば桶川ストーカー事件のように「人が殺されるまで警察は動かない」みたいな状態でいいのか?という問題提起をしたつもりでした。しかし、西村さんはその前段として「犯罪が起これば警察が動く」というごくまっとうな意見を主張されていたということです。また、「2chといえども匿名ではない」という発言そのものが、「違法な書き込みにはプライバシーはない」という抑止力的な意味を十分含んでいるかどうかについては、その場ではうまく議論を深められませんでした。
特定の問題を解決するためのプランは費用対効果で選択されるべきです。「2chは匿名ではない」という発言の抑止効果は極めて高いものですが、私はそれを前提としつつも「匿名だと勘違いしている人」のために、「匿名っぽく見えますけど、ネット上で匿名というのはあり得ないです」という当たり前の事実を多くの人に知ってもらうべきではないかと考えています。
「絶対にバレない」と思っている人と、「匿名とは言っても、実はログが取られていて、最悪の場合自分が誰であるか露見する可能性がある」と思っている人では、おのずと発言の攻撃性が変わってくると考えているからです。
西村さんは攻撃性が変わってくるという点に関しては正直分からないということでしたが、仮に効果がなくてもユーザー向けのリスク開示の一環として、「ネット上は匿名に見えるものでも匿名ではありません。」という注意文言を同意要件とすることは必要なのではないでしょうか?軽い気持ちで脅迫めいた文章を書き込んで逮捕される人も、一言その注意書きを読んで思いとどまれば、と考えています。