佐藤慶さん死去…悪役も本番も存在感
大島渚監督の映画などで知的でニヒルな風ぼうで存在感のある演技を見せた俳優佐藤慶(さとう・けい)さん(本名・慶之助=けいのすけ)が2日午後4時19分、肺炎のため東京都世田谷区の関東中央病院で死去したことが6日、分かった。81歳。葬儀は近親者のみで営まれた。喪主は長男純(じゅん)氏。映画、ドラマ、舞台で活躍し、映画「白日夢」の愛染恭子との本番行為は話題を呼んだ。約3カ月前から体調を崩しており、入退院を繰り返していた。
佐藤さんは08年11月の藤原竜也主演映画「カイジ」(09年公開)の撮影が最後の仕事となった。主人公カイジを人生逆転ゲームに巻き込む「帝愛グループ」総帥兵藤を演じた。その後は高齢のため仕事を控え、10年に入って体調を崩し、約3カ月前から入退院を繰り返していたという。
福島県会津若松市役所の戸籍係に勤務しながら演劇に熱中し、無断欠勤して県の演劇大会に出場したためクビとなり、50年に上京。俳優座養成所に入所し同期に仲代達矢、宇津井健がいた。59年「人間の条件/第3・4部」の脱走兵役で映画デビュー。大島監督「青春残酷物語」(60年)出演をきっかけに「日本の夜と霧」「絞死刑」「儀式」など同監督作品に欠かせない俳優だった。残虐なやくざの親分や冷酷なエリートといった悪役でも存在感を発揮。60~70年代に黒木和雄監督「日本の悪霊」、新藤兼人監督「鬼婆」、今井正監督「武士道残酷物語」などの作品に多数出演した。
81年には武智鉄二監督「白日夢」で愛染を相手に本番行為を行い話題を呼んだ。大島監督「愛のコリーダ」で本番出演を断った佐藤さんだったが、「白日夢」の本番撮影には約50人の報道陣が詰め掛けた。当初は武智監督の意向で公開本番の予定だったが、佐藤さんは「精神統一したい。男としてつらいから」と公開を拒否。結局、報道陣を閉め出し、1カットを6時間もかけて撮った。
テレビではNHK大河ドラマ「太閤記」の明智光秀役、朝のテレビ小説「チョッちゃん」の父親役、テレビ朝日系「白い巨塔」の財前五郎役など数々のドラマに重要な役柄で登場。落ち着いた低音の声を生かして日本テレビ系「知られざる世界」やドキュメンタリー映画「東京裁判」のナレーションでも活躍。舞台も井上ひさし作「イーハトーボの劇列車」で紀伊国屋演劇賞を受賞した。
貧乏時代は検定教科書や同人誌などのガリ版刷りの仕事で食いつなぎ、当時のガリ版用具は捨てがたく、晩年まで大事にしていた。
[2010年5月7日7時50分 紙面から]
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