269g

2010年04月26日

1554 幻か、佐藤慶

 ランク、昨日52位、今日58位。

 俺は実についてない男だ。ついてないというか、なんか、時代とワンテンポずれて生きているとしか言いようがない。会えるはずの人間とも、ワンテンポ外れて会えないのだ。俺なんてこんなもんなのだろう。
 ある人を通じて、俳優佐藤慶さんと会えるという幸運を手にするところだった。そのかたの紹介で、佐藤さんと携帯電話でお話をした。信じられないことだ。以下、要旨。
私「(いろいろ言ったあとで)佐藤さんの、『青春残酷物語』の役は最高でしたね」
佐藤氏「君、なんでそんな古い映画知ってんの!?」
私「僕、ビデオ持ってますから、大島組の佐藤さんの映画ほとんど見てます」
佐藤氏「是非話をしよう。僕の行きつけの喫茶店があるから来なさい」
私「ところで、女優、××××とか×××とか、どんな人だったんですか?(これ、聞きたかったあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!)」
佐藤氏「黒田くん、女優なんてロクなもんじゃねえよ。オレが全部言ってやる。映画の話をしようよ」
 そこで、「よろしくお願いします」と俺は電話を切った。2月、3月中にお会いする予定だったが、僕が、事情があって仕事で忙殺されて時間が取れず、桜咲く4月に、ということになった。仲介者のかたは、佐藤さんがしょっちゅう「黒田くんに会いたい」と言っていたと伝えてくれた。わかる気がする。50年代、60年代という黄金期の日本映画の話をする相手がいないのだろう。俺だって、周りにいない。ましてや、その黄金期に咲いた佐藤慶さんのことだ。大島組当時の映画のことを語り合える人なんて、周りには皆無だろう。だから、僕とぜひ話をしたいとおっしゃっていたのだ。
 ととととと、ところがである。ヒマになった4月に、仲介者に「いつでもいいから佐藤さんに会いたいです」と言ったら、残念なことに佐藤さんは体調を崩して入院され、意識もさだかでない状態であるという。私は愕然とした。電話で話した声には張りがあって、「をを、あの明智光秀の佐藤慶だ」と俺は感動したものだが、大島渚や新藤兼人の演出、共演者のこと、聞きたいことがいっぱいあった。もう話すのは無理だと言われ、僕は愕然、がっかりしている。病気からの回復をお祈りするばかりだ。
 私の人生とはこういうものである。なんかズレまくっているのだ。会うべき人間と会えないという不運の連鎖が私の人生なのだ。会うべき猫とは会っているかもしれない。しかし残念ながら、猫である。ああ、日本映画の話がしたい。日本映画を語り合いたい。そんな相手が欲しい。私が死ぬころには、ほとんど昭和の映画人は鬼籍に入っているだろう。映画人の人と、一人でもいいから語り合いたい。佐藤慶さんとの対話は最後のチャンスだったのかも知れない。私の夢は、高峰秀子と映画の話をすることだ。それも叶わぬ夢だろう。MYビデオを見ながら、黄金期の映画人たちの夢や野望を想像するほかないのである。嗚呼、佐藤慶さん、病から立ち直ってください。

ニックネーム 茶トラのみんく at 22:41| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
黒田さんは松木秀氏の第二歌集「RERA」(六花書林)を読まれましたか。
Posted by 通行人 at 2010年04月27日 18:00
 まだ読んでません。
Posted by ひでお at 2010年04月27日 21:31
"RERA"昨日午後四月号が到着したので、夕方投函する予定です。今とにかく頭が西日でいりつけるように焼かれてて食べたら美味しいかも…って味見に来ないでくださいね。熱ピタで冷却中。

と言うのは与太話で、1960年代の映画について、見る側としてはうちの夫と顔合わせしてもいいとは思いますが、(トーキーから、アニメから、何でも見ておりますです)初めてこのブログを見て、こういう話について黒田さんが(引用)ってなんだかかなり怒ってるみたい、と言ったら

夫は一言「黒田さんはまじめな人だね」と言って布団で大福食べてました。こういうおっさんでよかったら…
Posted by ふゆのゆふ at 2010年04月28日 16:00
 いいご主人だと思います。
Posted by ひでお at 2010年04月29日 00:06
多分、幼児(1960年初め。)に、おじいさんの肩車でちゃんばら映画を見たのが原体験でしょう。

そのころはチャンバラのほうに夢中だったと思いますが。

父親はいても、病気で入院しているし、ある程度大きくなったらじいちゃん死んじゃいますのでね。
Posted by ゆふ at 2010年04月29日 08:57
 そうですか。肩車をされて映画を見たのですか。いい経験ですね。
Posted by ひでお at 2010年04月29日 23:46
残念なことに、5月2日に鬼籍に入られたというニュースが入ってきました。謹んでご冥福をお祈りします。
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20100506-OYT1T00316.htm?from=main2
Posted by むらた at 2010年05月06日 14:40
>むらた様
 僕は、今日知りました。天皇賞春の日に亡くなられたんですね。電話の声は、元気いっぱいだったのになあ。
Posted by ひでお at 2010年05月06日 23:34
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