差別用語、犯罪描写、身体損壊……封印されたキケンな日本映画たちサイゾー5月 6日(木) 17時24分配信 / 国内 - 社会「封印作品」とは、なんらかの理由で出版や放送が困難となってしまったコンテンツのことだが、隠されると覗き見たくなるのが人間の性、とばかりに、こうした封印作品を集めた関連本などがいくつもリリースされており、ちょっとしたブームとなっている。 封印作品の中でも多いのが、昔の日本映画だ。かつては普通に上映されたり、ビデオでリリースされていたりした作品が現在は観ることができず、いつまでたってもDVD化されない。そのほとんどは、差別的な表現が含まれていたり、権利関係がクリアにされていなかったりすることなどが理由だが、芸術性や娯楽性の高い名作たちが封印されてしまっているのは、いろんな意味でもったいない。 特に差別用語の問題で引っかかっている作品は非常に多い。『めくらのお市物語 真赤な流れ鳥』(京都映画/69年)や『混血児リカ』(東宝/72年)などは、タイトルの時点ですでに封印的要素が強く、内容的にはあまり問題がないものの、ソフト化されていない。 映像的な描写が問題となったモノでは『ノストラダムスの大予言』(東宝/74年)がある。核戦争後の未来として描かれたシーンに登場する、放射能の影響で奇形化した人類の描写が差別的であると指摘され、公開後に修正版がつくられるなどのトラブルになった。一時はビデオ化もアナウンスされたが、国内での販売は見送られている。 また、著作者などからの抗議や、権利問題がクリアできないため、DVD化できないというパターンも多い。三島由紀夫の生涯を描いた半自伝的作品『MISHIMA』(ワーナー/85年)は、劇中の三島の自慰シーンや、ホモセクシャル的な人物像に遺族からの抗議があったとされ、日本での劇場公開も見送られてしまった。 さらに、現実の事件に関連づけられて封印されてしまうこともある。ホラーブーム最盛期に製作されたオリジナルビデオ作品の『ギニーピッグ』(オレンジビデオハウス/85年〜)シリーズは、そのリアルで凄惨な描写で話題となった作品だが、このうちの1本を埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人である宮崎勤が所有していたというだけで問題となり、結果としてシリーズすべてが封印された。宮崎が所持していたのはコミカル路線の4作目『ピーターの悪魔の女医さん』であり、とても犯罪を誘発するような作品ではないのだが……。 こうして作品ごとに見ていくと、実際に映像そのものに封印すべき問題があることはほとんどない。が、昔からマニアは「封印」や「放送禁止」「未ソフト化」などのタグに惹かれる傾向があり、アナログの時代から「裏ビデオ」として取引されていた。要は、オタク度を計るアイテムだったのである。 しかし、ネットの時代になって、封印映像の価値は一変した。動画共有サイトの登場で、大抵の映像はクリック一発で観ることができるようになったのだ。もはや世界中のどこかで一度でも放送されたり、パッケージ化されて出回ったりした映像ならば、どこかの誰かが確実にアップしてくれている。 そしてネットは、不遇な邦画作品の封印を、もうひとつの方法で解いてくれる。実はこれらの映画は、海外では普通にソフト化されているものも多い。そのテの輸入盤サイトに行けば、幻の作品のDVDを簡単にお取り寄せすることができるのだ。 確かに差別用語などの自主規制は、あくまでも日本国内のモノ。それだけが問題なら、海を越えればすべて解決してしまう。輸入盤ショップでバカ売れした『恐怖奇形人間』(69年/東映)などは、最初からこうした逆輸入需要を狙って製作された気もするが、なんにせよ封印されていた名作の数々を普通に観賞できるのだから、映画文化的な側面からいっても良い状況といえる。 「封印映画」といっても、法律的な根拠があるわけではなく、あくまでも誰かの自主規制の産物。気になったのなら、自分で実際に観て本当にタブーな作品なのかを判断するべきだ。そうすれば、今シネコンで垂れ流されているテレビ局製作映画の中に、よっぽど封印したほうがいい作品があることに気づくかもしれない……。 (文/灸怜太) 【関連記事】 ・ 日本公開は奇跡!? 井口昇のモンダイ映画がついに解禁!
|
PR
GWおすすめ映像(GyaO!) |