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アイドル映画に作品としての完成度は関係ない!?
――今回はアイドル映画がテーマということで、渡辺さんには申し訳ないのですが、宇田川さんのための対談と言ってもいいですよね(笑)。それに、宇田川さん待望の佐藤江梨子(通称:サトエリ)の主演映画『キューティーハニー』がついに公開されますね
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『キューティーハニー』 5月29日公開
永井豪の人気コミックを佐藤江梨子主演で実写映画化。監督は、『新世紀エヴァンゲリオン』('95)の庵野秀明。
(C)2003 キューティハニー製作委員会
(C)1973永井豪/ダイナミック企画 |
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渡辺 『キューティーハニー』の試写に行ったら、見に来ているのがおじさんばかりで笑っちゃった。いつもの試写室とはちょっと違う雰囲気で、みんなクスリともせずに“じとーっ”と見てるの(笑)。
宇田川 ぼくが完成披露試写会に行ったときは、会場が汗くさかったな。その前の試写が似た感じの客層向けのアニメだったから、残り香にまた新たな香りが加わってすごいことになってた(笑)。
渡辺 それにしても、『キューティーハニー』はオープニングからいきなりサトエリさんの入浴シーンだとは思わなかったわ。
宇田川 大満足でした(笑)。去年、彼女が初めて主演した『プレイガール』('03)があったんですけど、あまりにもひどい出来でがっかりしてたんです。でも、『キューティーハニー』はサトエリらしさを引き出していて、「(監督の)庵野秀明、エライ!」って思いました。
渡辺 確かにかわいかったけど、演技はヘタね(笑)。セリフ回しなんて話にならないもの。とはいえ、アイドル映画に演技力は必要ないと思うから、それに関してはうるさく言うつもりはないの。だけど、ときどき彼女の顔が暗く写るところがあって、私は監督の手抜きじゃないかと思った。
宇田川 庵野監督はアニメ出身の人だから、照明にまで気がまわらないのかな(笑)。
渡辺 サトエリさんはかわいい顔をしてるけど、ちょっとエラが張っているから、撮り方によっては“おばさん顔”に見えちゃうのよね。アイドルを撮るんだったら、『野菊の墓』('81)の松田聖子ぐらいかわいく撮ってあげないとかわいそうよ。吉永小百合の映画だって、映画としてはつまらなかったけど、みんな彼女をキレイに撮ろうとしているのはわかったもの。
――とはいえ、『キューティーハニー』には庵野監督の映画らしいオタク心をくすぐるものがあるんじゃないですかね…。
宇田川 全体的にはそうだと思いますよ。でも、ぼくはそんなディープなオタクじゃないからわかりませんけど(笑)。
渡辺 宇田川さんは趣味と実益を兼ねたオタクよね(笑)。宇田川さんが大好きな岡崎友紀ちゃんにしてもそうだけど、昔から日本の女優さんにはアイドルが多いの。だから、最初はアイドル映画だと意識しないで見ることの方が多いなぁ。
宇田川 ぼくはそれが不満だったんです。松田聖子の映画として『野菊の墓』を見に行ったのに、“なんだ(監督の)澤井信一郎の映画じゃないか”って。確かに澤井信一郎はうまい監督で、あの映画もよくできていたんだけど、アイドル映画の撮り方としては、ぼくののぞむものではなかった。ぼくとしてはバランスが崩れてもいいからアイドル中心に撮って欲しいのに、普通の映画としてしっかり作っているから聖子ファン的に見るともの足りない。とはいえ、そうやって“アイドル・ファン”ウケのする映画にばかりに出ていると、女優としては伸びないんですけど…。
アイドル映画の始まりは山口百恵から!?
宇田川 そもそも“アイドル”ということばが使われるようになったのは、いつ頃からなんでしょうね。ぼくの記憶では、70年を境によく使われるようになった気がするんですが…。
渡辺 そうね。昔、浅丘ルリ子が『緑はるかに』('55)に出てかわいいと騒がれたときには、まだアイドルという表現は使われてなかった。それに、50年代には美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみの“三人娘”がいたけど、誰もアイドルとは言わなかった。
宇田川 ときどき美空ひばりがアイドルだと言われると、すごく違和感があるんですよ(笑)。
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『アイドルを捜せ』
当時、人気絶頂のアイドルだったシルヴィ・バルタン主演のアクション・コメディ。主題歌も大ヒットした。
発売:東北新社
¥3800(税別) |
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渡辺 映画の題名として使われたのは、シルヴィ・ヴァルタン主演の『アイドルを探せ』('64年公開)が最初じゃない?
宇田川 その後が、ビートルズの『HELP!四人はアイドル』('65年公開)。当時はまだ、外国人だけに限定して使うことばだったんじゃないかと思います。日本でもビートルズのあおりを受けてグループ・サウンズが流行ったときに何本か映画が作られたけど、あれもGS映画という呼び方でアイドル映画とは言わなかった。
渡辺 それじゃあ、アイドル映画の最初って何かしら?
宇田川 70年代にホリプロが映画製作に関わるようになってからだと思うんですよ。山口百恵とか森昌子の映画。初めからそう言っていたかどうかは知らないけど、途中からアイドル映画って呼ばれてましたよね。そのまえに、天地真理、小柳ルミ子、南沙織の三人をアイドルって言ってた気もする。
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『伊豆の踊子』
川端康成の名作を映画化した山口百恵主演のラブストーリー。百恵演じる踊子と恋に落ちる書生役には三浦友和。
発売:東芝EMI
¥4571(税別) |
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渡辺 あの頃は若い女優さんが出てくると、決まって青春映画か『伊豆の踊子』が作られたのよね。ということは、初代“踊子”の田中絹代もアイドルってこと!?
宇田川 それは前に誰かも言ってましたよ。アイドル映画をたどると、田中絹代に行き着くって(笑)。でも、ことばの歴史としてはそれはありえない。
――アイドルの登竜門といえば、『潮騒』もそうですよね。古くは吉永小百合から、山口百恵、堀ちえみまでやってます(笑)。
宇田川 吉永小百合になると、アイドルよりも映画スターって感じがするけど。
渡辺 昔は映画会社に専属のスターがいたけど、70年代頃から芸能プロダクションの力が強くなってきたでしょ。そうやってプロダクションの力が強くなった時代が、アイドルが出てきた時代なのかも知れない。TVの「スター誕生」が始まったのその頃だと思うし。
宇田川 そう、映画にとっての「アイドル」とは、映画の外からくるものなんですよね。映画会社がそだてるものではなくて。
――そういえば、山口百恵も「スター誕生」出身ですよね。
宇田川 彼女が最初に出た映画は、和田アキコ主演の『としごろ』('73)なんですよ。ホリプロのタレントがいっぱい出ていて、山口百恵はレイプされる役だった。
渡辺 とはいえ、映画のアイドルといえば、薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の角川三人娘じゃない?
宇田川 角川映画は80年代だから、山口百恵よりずいぶん後ですね。その頃にはアイドルということばが完全に定着してました。彼女たち、角川映画のアイドルは、映画から出発しているんだけど、歌とかテレビとか、やはり映画以外での世の中への訴求力がめだつ。
――渡辺典子は“角川映画大型新人女優オーディション”のグランプリだったにも関わらず、いまいちパッとしませんでしたね。特別賞だった原田知世の方がもてはやされて…。
宇田川 渡辺典子はあの中ではいちばん美人だと思ったんだけどなぁ。でも、アイドルとしては、映画以外でのかがやきがよわかった感じですね。今もときどきTVに出てるけど美人ですよね。
渡辺 美人だからといって、必ずしも女優として成功するとは限らない。薬師丸ひろ子だって昔はかわいい大物アイドルだったけど、息長くいろんな役ができるわけじゃないもの。
宇田川 今は彼女、ヘンな感じですよね、言っちゃわるいけど(笑)。
渡辺 それにしても、いったいアイドルスターって何なのかしら。青春の一時期に輝きを放って、あとは消えていくもの?
宇田川 かつて小泉今日子が「なんてったってアイドル」という歌を出したでしょ。あれで初めて意識的にアイドルをやったわけですよね。それまでは「アイドル」が職業だとは意識されてなかったし、“アイドル”という言葉を侮蔑的に使う人の方が多かった。「女優」や「歌手」は立派な職能だけど、アイドルはすべてに関して能力がたりない存在と思われていた。
渡辺 いちばん息長くアイドルをやっているのは、松田聖子よね。
宇田川 いやいや、由美かおるに比べたら、松田聖子なんてまだまだですよ。50歳を過ぎてアレは、スゴイ(笑)。 |
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