PROFILE (HTML版)
渡辺祥子 宇田川幸洋

2003.4.25 UPDATE  


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舞台版を知っていると楽しさ2倍!

――今回から始まる渡辺祥子さん×宇田川幸洋さんによる新連載『わぅ シネマなふたり』ですが、記念すべき第1回目の対談テーマは渡辺さんの大好きな“ミュージカル”です! 『シカゴ』がアカデミー賞に輝いたことで、一般的にもじょじょに盛り上がりつつあると思うのですが…。

『シカゴ』全国松竹系にて公開中
第75回アカデミー賞で作品賞など最多6部門を受賞した話題のミュージカル。
渡辺 そうなの! わたし的には今日は『シカゴ』の(第75回)アカデミー賞受賞記念の対談だと思ってる(笑)。でも、昔のミュージカルが好きな人は、『シカゴ』が気に入らないらしいの。編集に凝りすぎていて、ストレートに見せないからイライラするみたいよ。

宇田川 ぼくはあれぐらいなら平気だな。

渡辺 そうよ。だって編集がなかったら、ほとんどダンス歴のないリチャード・ギアなんて出られっこないもん! アカデミー賞で編集賞に輝いたでしょ。やっぱりアカデミー賞は、見てるところは見てるわね(笑)。

宇田川 ギリギリのところだとは思うんですよね。ぼくも『ムーラン・ルージュ』('01)まで目まぐるしくやられるとちょっと…。『シカゴ』は、踊りは踊りとして生かすという意識で細かく編集しているからイヤじゃない。

渡辺 今って、あまりゆっくりなテンポだと観客がついてこなくなっちゃうんじゃないかな。その点、監督のロブ・マーシャルは現役の舞台演出家で振付師だから、そのあたりのサジ加減を心得ていると思うのね。


『フォッシー』
『シカゴ』の生みの親ボブ・フォッシーによる名シーンをつめ込んだ集大成。
発売:WARNER MUSIC VISION
¥4762(税別)
宇田川 もともとボブ・フォッシーの振付は、踊り自体がストップ・モーションになるところがあるから、編集できざめる振りだと思うんですよ。フレッド・アステアの時代だと、ダンスの流れを中断しちゃいけないっていうのがありましたけど。

渡辺 しかも、ボブ・フォッシーの振付にロブ・マーシャルが独自の振りを新たにつけ加えているから、編集をしても流れの壊れないダンスシーンができたんだと思う。『シカゴ』って、舞台版ではミュージカル・ドラマじゃないのよ。ミュージカル・ボードビルというショー形式。ステージ上にバンドが乗っていて、俳優たちもタイツと帽子だけでとくに衣装を着ているわけでもない。刑務所も殺人が起きる場面も歌とダンスだけで表現しているから絵にはならないし。それに、(映画ではレニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じた)ロキシーとヴェルマは同等のヒロインなの。映画はロキシーをヒロインにして、ヴェルマを脇に廻わし、ロキシーの夢想としてミュージカル・ナンバーを組み立てることですっかり新しいものになった。ロブ・マーシャルの創造力と想像力の勝利よね。

宇田川 もとの舞台を知ってると、もっと面白いんでしょうね。話を語るドラマの部分がまずあって、そこから歌い踊ることによって飛躍していくのが従来のミュージカルだと思うんですが、そう思って『シカゴ』を見ると最初はかなりとまどいますよね。でも、もとがボードビルだと知るとうまくやってるなと思う。

『シカゴ
レニー・ゼルウィガーはロキシー役でアカデミー賞主演女優賞候補になった。
渡辺 あと、『シカゴ』は芸を持っている人がいなくなったと、みんな悲しんでいたところに、とんだ伏兵があったって感じね。キャサリン(・ゼタ=ジョーンズ)は元ダンサーだから踊りはあたり前だけど、あれだけ華と演技力がある人は稀有。レニー(・ゼルウィガー)なんて素人なのに本当によくやったと思う。いわゆる映画スターと呼ばれる人たちが訓練しだいであそこまでできたわけだし、これでミュージカルの可能性が広がったんじゃないかしら。

――ということは、『シカゴ』のキャスティングが発表されたときはかなり驚かれました?

渡辺 “えー、嘘でしょ! レニー・ゼルウィガーなんて…”って思った。でも、あそこまでできるとは思わなかったなぁ。キャサリンは大丈夫だろうと思っていたけど、あれほどとは思わなかったし。だいたい『シカゴ』がああいうミュージカルになるなんて考えもしなかった。

宇田川 ぼくは、レニーはどうもなぁ…。もっとゴージャスな人のほうがいい。

渡辺 どうせ、宇田川さんはルックスが趣味じゃないのよ(笑)。


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