疲れが見え始めた先発陣に頼りになる男が戻ってきた。故障で出遅れていた中日・中田賢一投手(27)がいよいよナゴヤドームのマウンドに立つ。交流戦前最後の3連戦の初戦、7日のヤクルト戦で先発する見通しだ。6日はナゴヤドームで最終調整。キャンプ中に痛めた右前腕はすっかり回復し、剛球復活に手応え十分。ツバメキラーでもある中田賢が沈滞ムードを一掃する。
満を持した中田賢の開幕だ。ほかの先発陣とともにランニングやキャッチボールで汗を流す表情も明るい。「不安はないです。思い切っていける状態になりました」。ため込んだ闘志が言葉の端々ににじみ出た。
絶好のタイミングで役者が舞台に帰ってきた。開幕から1カ月余りで、先発陣は危機的な状況。大型連休の9連戦で打ち込まれた小笠原とバルデスはそろって2軍落ち。ローテーションの中心となるべき左腕エースのチェンは絶不調。信頼できる先発の頭数が足りない。このピンチに白羽の矢が立ったのが中田賢。通算41勝の実績、真っ向勝負で打者をねじ伏せるパワー。救世主になれる男だ。
故障は癒えている。それどころか、けがの功名で力を増している。中田賢は「コーチにいいアドバイスをもらいながらやってきた。真っすぐも納得いくタマになっている」と自信を見せる。昨季は自慢の球威がいまひとつで5勝止まりに終わったが、故障を契機にリフォーム。2軍戦では140キロ台後半を連発し、本来の快速球がよみがえってきた。
落合監督は中田賢を「暴れ馬」と呼ぶ。制球には確かに難があるが、それを補ってあまりある剛球をこの右腕は持っている。「球威」と「制球」の二兎(にと)を追って迷路に入り込んだ時期もあったが、今はその迷いも消えた。
「全部が全部まとめようとは思っていないし、まとめられるとも思わない。自分のスタイルは押していくこと。勝負どころでいいタマを投げたい」。原点回帰。「暴れ馬」の復活宣言だ。
ヤクルトには抜群の強さを誇る。通算では9勝3敗、防御率2・93の好成績。「足の速い選手が多い。イニングの先頭で出すと苦しくなるので、先頭打者には集中力を高めていく」と中田賢。この1カ月はテレビで1軍の試合を見続け、自分なりに抑えるイメージを膨らませてきた。対策に怠りはない。
思い返せば、昨季も故障などに苦しんだ中田賢が待望の初白星を挙げたのがヤクルト戦(7月7日・神宮)だった。歴史は繰り返す。 (木村尚公)
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