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きょうの社説 2010年5月7日
◎農業参入支援強化 6次産業化の地域戦略を
石川県は産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)で行う農商工連携事業の一環
として今年度、企業の農業参入と新たなビジネス展開の支援を拡充することにし、6日から対象事業の募集を始めた。農地法改正で企業の農業参入が一段と容易になったためで、時宜にかなった措置であるが、政府の農業経済政策は従来の農商工連携に加えて、農業農村の「6次産業化」が柱の一つに据えられるようになった。類似の支援制度が併存する形で、その統合は無理としても、農業ビジネスの振興を図る二つの政策の流れを総合した地域の6次産業化戦略があってもよいのではないか。6次産業化とは、農林水産業の1次産業と食品製造などの2次産業、販売や観光などの 3次産業を掛け合わせて新ビジネスを展開することで、基本的には2008年施行の農商工連携促進法に基づく事業とほぼ同じである。 鳩山政権はこの6次産業化を今年3月に決定した新しい「食料・農業・農村基本計画」 の主要政策に盛り込んだ。さらに農水省は水産業と林業も含めた「農林漁業6次産業化促進法案」を今国会に提出しており、今後、農林漁業者らが販売、加工施設などを整備する場合に補助金を交付する新事業をスタートさせる。石川県の活性化ファンド事業にも似たような支援制度が設けられている。 6次産業化は農産品の加工、販売などに限らない。例えば、能登を中心に利用者が増加 している「農家民宿」は農業農村の6次産業化の一つである。県内では最近、建設業などから農業に参入した輪島市内の企業3社と金沢市内の食品加工関係の2社が「のと農工商事業協同組合」を設立し、農作物の販路拡大や商品開発などで連携する新たな動きも出ている。 こうした取り組みのテコ入れを図り、地域の6次産業化を推進することが今後一段と重 要になる。全国の自治体の中には、農水省と経産省がそれぞれ主導する6次産業化と農商工連携を発展させた独自の産業戦略を策定するところも見られる。企業の農業参入や6次産業化を誘導するコーディネーター機能の強化も必要である。
◎韓国哨戒艦沈没 強まる北朝鮮関与の疑い
朝鮮半島情勢がきな臭さを増している。韓国紙の報道によると、同国海軍哨戒艦の沈没
海域から回収されたアルミニウム片が魚雷の破片であることが判明したのに続いて、引き揚げた船体から魚雷に使われる火薬の成分が検出されたという。これが事実なら北朝鮮による攻撃で沈没した可能性を想定せざるを得ない。韓国、北朝鮮ともに軍事衝突を望んでいるとは思わないが、不測の事態が起きぬとも限 らない。東アジアの安全保障に大きくかかわるだけに、日本も万一の備えをしっかりやらねばなるまい。 不安のタネは、自衛隊の最高指揮官でもある鳩山由紀夫首相の指導力だ。先日の沖縄訪 問では、「衆院選当時は海兵隊が抑止力になっているとは思わなかった」などの衝撃発言で、軍事オンチぶりをさらけ出した。決断ができないリーダーは、有事に不向きである。普天間問題をめぐって不安定化する日米同盟に韓国政府は、ハラハラし通しだろう。 北朝鮮の関与が確定した場合、韓国は国連安保理に提訴し、制裁の強化を求めるはずだ 。国際世論に北朝鮮の非道を訴え、38度線をはさんで南北関係は一触即発の空気となろう。ただ、米紙ワシントン・ポストが哨戒艦の沈没について、「米国と韓国が北朝鮮による攻撃だと断定できない最大の理由は、断定後にどう対処すべきかを見いだしていないことだ」と指摘したように、現実問題として北朝鮮に対する「報復」は難しい。 北朝鮮の金正日総書記は、約4年ぶりの訪中で、中国側と6カ国協議への復帰を話し合 ったとみられる。協議再開の機運が高まり、哨戒艦沈没がうやむやになることを韓国は懸念しているだろう。韓国としてはこぶしの下ろしどころが難しいだけに、南北間の緊張は長引く可能性があり、日本としても安穏としてはいられない。 朝鮮半島から見ると、在沖縄米軍の存在感は極めて重い。沖縄は日本ばかりでなく、韓 国や台湾の安全保障のカギを握る存在である。普天間問題で日米関係がぎくしゃくしている状況を一番喜んでいるのは北朝鮮なのではないか。
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