【コラム】「天安」事故とムーディーズのメッセージ(上)

 沈没した哨戒艦「天安」の船尾引き揚げ作業の準備が行われていた4月14日午後2時50分、京畿道の果川政府総合庁舎にある企画財政部の様子が急に慌ただしくなった。世界的な格付け会社の米ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、韓国に対する格付けを引き上げたという朗報が飛び込んできたからだ。許京旭(ホ・ギョンウク)第1次官は興奮した口調で30分を超える記者説明を行い、「『天安』の事故があったにもかかわらず、こんな良い結果が出たのはありがたい」と2回も語った。ある幹部は「国の信用格付けが通貨危機以前の水準を回復し、真の意味で通貨危機を克服したことになる」と喜びを隠せなかった。

 ムーディーズの格付け上方修正は予想外の出来事だった。ムーディーズの調査団が最近、韓国の経済状況を調査するために訪韓していたが、「天安」の沈没事故に北朝鮮が関与した可能性が浮上したため、好結果は期待していなかった。ムーディーズは信用格付けの決定過程で、経済的な不確定要素よりも政治的、社会的なリスクを重視する傾向がある。このため、今回は北朝鮮リスクの増大で朗報は期待できないというムードが支配的だった。ところが、結果は違った。

 ムーディーズのトム・バーン副社長は、上方修正した理由について、景気回復、財政状況など経済的成果だけでなく、北朝鮮リスクにも言及した。韓国で平和奉仕団として活動し、韓国人と会えば「焼酒(韓国式焼酎)で1杯」と語るほどの韓国通で、本紙のオンラインニュースを毎日チェックするというバーン副社長が、事故のことを知らないはずはなかった。しかし、「天安」の事故には直接言及しなかった。その代わりに、「北朝鮮リスクは韓国の国家信用格付けにとって、非常に大きなリスク要素だ」と繰り返し述べた。ふと聞けば、今回の事故で韓国の安全保障リスクが上昇したとも考えられる。しかし、バーン副社長が下した結論は異なる。「北朝鮮リスクは、堅固な韓米同盟と北東アジア域内国間の共同利害によって相殺されている」というのだ。北朝鮮が挑発を行ったとしても、韓米同盟が強固であれば、格付け引き上げの障害にはならないという見方だ。

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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