日本に占領されていた1934年、人気芸能集団だった「朝鮮楽劇団」に入団、芸能界入りした白さんは、49年にKPK楽団が制作した音楽劇『カルメン幻想曲』でヒロインのカルメン役を演じ、一躍スターダムにのし上がった。芸名を「白雪姫」にしたのもこのころだ。KPKの団長だった著名な作曲家、金海松（キム・ヘソン）氏が「エベレストの雪が昼夜を問わず、季節を問わず解けずにまぶしく輝くように、歌手として最も高い場所で冷めやらぬ情熱を持って輝け」という気持ちを込め、名付けてくれた。その後、韓国戦争直前に新星楽劇団に移り、俳優のファン・ヘさんと出会い結婚、生涯を共にした。

　53年に人気作曲家の朴是春（パク・シチュン）氏と知り合い、本格的な歌手の道を歩んでいく。『カルメン夜曲』『水鳥鳴く川辺』『青ブドウ咲く夜』『コリア・ルンバ』など数多くのヒット曲がこのコンビで誕生した。中でも、時代を超えても色あせない味を持つ最高傑作は『春の日は行く』だ。53年に大邱ユニバーサル・レコードから発売されたこの曲は、韓国戦争後も夫と家族のために犠牲となり、心身を投げ打たなければならなかった当時の女性たちの悲哀を淡々と歌い上げている。後に李美子（イ・ミジャ）、趙容弼（チョー・ヨンピル）、羅勲児（ナ・フナ）、ハ・チュンファ、チェ・ホン、イ・ウナ、イ・ドンウォン、シム・スボン、チャン・サイク、ハン・ヨンエらが次々とカバーし、この曲の力強い生命力を証明した。さらに、ホ・ジノ監督はこの曲と同名の映画を作っている。また、季刊誌『詩人の世界』が詩人100人に「一番好きな歌詞」についてアンケート調査したところ、圧倒的な支持を得て1位になったのも、この曲だ。大衆音楽評論家のチェ・ギュソンさんは「激変する歴史に耐え、生き抜いた韓国の古典的な女性像が絶妙に表現されている曲。白さんの声には、聞く人の心の琴線に触れる独特のパワーがある」と評した。白さんはこのほかにも『牧場のお嬢さん』『アメリカのチャイナ・タウン』『天の黄金馬車』などを次々とヒットさせ、50－60年代は文字通り「白雪姫の時代」になった。

　ファン・ヘさんとの間に全永禄さんら4男1女を設け、3世代とも芸能界入りさせるという、韓国芸能界名門一族の母だった。孫娘のチョン・ボラさんは、「孫たちは祖母のことを『白雪姫（しらゆきひめ）』と呼んでいた。祖母はわたしの胸の中で、いつまでも美しいまま生きている。テレビにわたしが出ているのを見て、飛び跳ねんばかりに喜んでいたという話を聞き、胸がいっぱいになった」と涙ぐんだ。葬儀はソウル市内のアサン病院で行われ、7日午前8時に出棺、京畿道広州市のサムソン公園に埋葬される。

崔承賢（チェ・スンヒョン）記者