【社説】「北朝鮮問題=中国問題」の公式で中国が損する日
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記による訪中がメディア報道で正式に確認された。金総書記は3日午前5時、17両の特別列車で中朝国境の鴨緑江鉄橋を渡り、中国・丹東に到着、乗用車で大連を訪れ、1泊してから遼東半島西方の錦州に向かった。最終目的地は北京と見られている。
今回の訪問は、1994年に父・金日成(キム・イルソン)主席が死去し、金総書記が最高権力者の座を受け継いでから5回目の訪中だ。これまでの訪中は南北首脳会談の事前協議(2000年)、新義州特区など一部開放政策施行(01年)、北朝鮮による2回目の核実験が問題化した時期(04年)、中国開放政策の成果視察(06年)で、こうした状況を見て分かるとおり、北朝鮮の危機または政策的に重要な転換期の前後に行われている。金総書記は権力継承後、中国を5回、ロシアを2回訪問しているが、それ以外に外遊したことはなく、国際会議に顔を出したこともない。北朝鮮という世襲王朝の窓は、この50年余り、中国だけに向かって開いていたと言っても過言ではない。北朝鮮は衣食住に困窮したり、自らの好戦的な挑発により国際的な孤立が深まるたび、中国に頼ってきたし、中国もそのたびに北朝鮮に手を貸してきた。韓国はもちろん、世界中が「北朝鮮問題=中国問題」と自然な流れで見なすようになったのも、こうした経緯があるからだ。
金総書記の今回の訪中も、デノミネーション(通貨単位の変更)失敗による全国的な民心動揺、経済的低迷の深刻化、肥料・農薬不足・異常気象による食糧難の悪化が背景にある。そうした中、特に金総書記の訪中時期に注目すべきなのは、韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没の原因が絞られ、その加害者を特定する延長線上に北朝鮮の姿がはっきりと浮かび上がっている時期だからだ。中国がこうした金総書記を受け入れ、北朝鮮に経済援助を約束し、金総書記はその対価として6カ国協議への復帰を約束することで、現在の局面を覆い隠そうとしているのなら、世界中にあらためて「北朝鮮問題=中国問題」と宣言しているのと同じことだ。
「天安」沈没の原因は事実上、結果発表を残すのみだ。周辺国が外交・安保戦略の枠組み自体を変えなければならないほど深刻な結論が出る可能性が高い。それにより、投げかけられる課題は、西海(黄海)を共に利用する南北と中国が中心的な当事者になり、それに米国が加わった「ミニ6カ国協議」的な形を通じ解決していくしかないかもしれない。
中国はこれまで、北朝鮮が時流に逆うような行動をするたび、間に入って力を発揮し、国際社会でその地位・評価を高めてきた。だが、それもやり過ぎれば、中国は北朝鮮の無謀な核実験やテロを暗黙のうちに了解したり、かばったりする国というレッテルを張られるだろう。
北朝鮮との正常でない関係を維持するしかなかった歴史的・地政学的な苦悩が中国にあったとしても、今後も引き続き「北朝鮮問題=中国問題」という状況が続けば、「世界の指導的国家」を次の国家目標として掲げる中国にとって、メリットはない。自らの保護国が核の秩序を乱すのを放ってくような国に、世界の秩序が任せられるだろうか。経済破たんに向かっていくのが明らかな北朝鮮から、今後あふれ出すであろう難民たちは、どこに向かっていくのだろうか。そのために生じる国境の大混乱を、中国は甘受できるのか。
世界経済第2位の大国である中国は、テロ・麻薬・偽札・武器輸出・強制収容所・拉致などに象徴される独裁国家に対し、後見人的な役割をすることが国のイメージにどれだけ役立つか考えてみるべきだ。この状況で、中国は「金正日体制を維持するのがいいか、変化させるのがいいか」という根本的な問題から考え直し、金総書記と向き合わなければならない。
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